異世界で、リアル模活始めました。(仮

日ノ本 ナカ

第1話

 幼い頃の俺は、特撮やロボットとアニメなどが好きだった。

 子供だし、男の子だから、特撮やロボットに憧れるのは当然だと思っていたが、俺の周りの子達は違っていた。

 サッカーや野球などのスポーツが好きだという子が多く、俺の趣味は少数派だった。

 だからか、俺は静かに一人で楽しむ事にした。

 特撮のヒーローやロボットは、寂しい思いや、悔しい思いをした時に救いをくれる存在だった。

 だから、将来の夢はスタントマンか、ヒーローを作る側になって、同じ思いをしている子供達の誇れる存在なろうと思った。いや、の間違いか、、、。


 そう、俺は今、絶賛無職フリーターの負け組人生に突入したダメ人間なのだから、、、


 ことの発端は、両親がやってた製菓系の職業が楽しそうってことで、進路を決めてしまったのが運の尽きだった。

 それまでは、勉強もそこそこ、運動は少し不得意な一般学生だった。

 しかし、製菓系の道に進むと決めて、理論や衛生について勉強し、専門学校も晴れて卒業、そして就職。

 朝は六時に出勤、休憩時間はトータルすると一時間、退勤はニニ時を当たり前のように超えてゆく。

 休みは週に一回、月で四、五回あるかどうか。

 暴言は当たり前のように吐かれ、それで、月の手取りが十万円しかもらえないのだ。

 肉体と精神が両方やられ、辞める事になった。

 しかしだ、上京した上に低賃金で重労働させられた俺は、貯金は無いし、治療費も満足に払え無い状態。

 再就職だと時間がかかる為、とりあえずフリーターになった訳ですよ。

 マジで、あのブラクック会社いつまでも恨んでやる!

 俺の持ってる資格だと、製菓系の職ではないと意味が無いのだが、、、前の職場の事もあり、中々前に進めず、ダラダラと過ごす日々。

 打開しないととは思うけども、先に進めないのが現状である。

 そんな中、大型家電量販店で買い物ついでに寄った模型のコーナーで、懐かしい出会いをしたのだ。

 幼い頃に好きだった、ロボットの模型だ。

 厳密に言えば、リメイク版だ。

 作りが変わっており、アクションフュギア並みに動けるようになっているのだ。

 パッケージだけでも、童心に帰るほど心が躍るのだ。

 勿論、即買いだ。

 実家に道具はあるが、自宅にはないので、色々と見て周る事にした。

 ニッパーだけでも、両刃や片刃、それに刃の薄さなどさまざまなな種類があった。

 後は、ヤスリや接着剤、墨入れ用のペン、ピンセット等を買い、家路に着いた。


 手洗いうがいを済ませ、暫くは箱を眺めてニヤニヤしていた。

 側からみると、気持ち悪いと思うだろうが、これは仕方ないと思う。

 まあ、一人暮らしだし、周りには気を使う必要はないのだけど。

 開封する瞬間は、やはりいつ見てもドキドキするのもだ。

 説明書を見ながら、ランナーの番号があるか、パーツの抜けがないかを確認したら、いよいよ作業開始だ。

 俺は、ランナーからパーツを切る時は、二度切りにし、デザインナイフで整えてから、ヤスリで磨き、コンパウンドで磨くをしている。

 そうすると、ゲート(切り離し跡)が綺麗に無くなるから、好きなのだ。

 今回はというか、塗装道具等を買う機会が有れば、ダボ処理(パーツを外れ安くする処理の事)をやるのだが、ないので省略します。

 あとは、パーツの溝にメリハリをつける為に墨入れ(溝にペンで線を入れたりすること)をしたりする。

 俺のお気に入りは、流し込みタイプ(他にはペンで書いたりする)だ。

 これは、溝にインクを入れると、スッと線が入るのですごく気持ちがいいのだ。

 最初は、胴体を作り、頭→腰→腕→足の順で作るのが好きなやり方だ。

 説明書通りで作ると、足は腰ができるまで着けられない事が多い為である。

 まあ作り方には、人それぞれの個性があるから一概には言えない所でもあるが。

 着々とロボットが出来上がる状は、圧感だな。

 各パーツ毎の稼働域が、かなり広く出来ており、実際に動く訳ではないが、歩き出しそうなフォルムがすごくそそられる。

 前に、実物大の物を見た事もあるけど、やはり自分の手で作り上げだ物は一味違うな。

 色んな角度で見たり、写真をひたすら撮ったりと、いい一日が過ごせた。

 また、新しいの買おう、、、かな?


【数ヶ月後】


 模活が再熱したある日、、、このままだと金銭的なピンチに陥る事に気づいてしまった。

 そもそも、俺はそこまで裕福な生活を送れる金銭的余裕は無いのに関わらず、毎月数万円の費用を模活に充てている。

 最近は、流行りのウイルス対策で夜間営業は自粛中の為、身入りが良いとは言えない。

 そんな現状にも関わらず、今日も買ってしまった、、、しかも、プレ値で、、、

 プレ値というのは、市場に出回る数が減り、希少価値が上がって、通常の値段よりかなりお高めになること、、、つまりは、興味の無い他人に言わせると、かなりの無駄使いをしたことになります。

 しょうがないじゃないか!

 S N Sで、一目惚れした機体だったのだから!

 再販予定も無く、まず市場には出回る事のない機体で、プレ値だとしても手に入るなら買うのがマニアという者だ!

 俺は、その心情に従ったまでの事だ!

 そう、言い聞かせてはいるのだが、、、軽くなった財布を見て、涙が止まらん。

 とりあえず今月は、賄いをガッツリ頂こう、、、

 まあ、今月始まったばかりなんだけど、、、

 俺が、パートで働いているお店は、某中華のチェーン店だ。

 店長は、すごく気の良いおじさんで、色々と助けてもらった。

 その恩返しにと仕事を覚え、今では、厨房と接客の両方が出来るようになった訳なのだが、、、

 覚え過ぎたせいで、面倒な仕事を受けることに。

 それに、店長が代替わりしたせいで、余計に人使いが荒くなった。

 転職しようと思うけども、中々一歩も踏み出せ無い。

 って、こんな話は、今はどうでも良い。

 とりあえずは、昼食と夕食は賄いで補えるし、朝食は食べない派なので問題無い。

 食い物に関してはどうにかなる。

 光熱費や家賃、奨学金の返済、携帯料金は支払い済んだから、、、

 あとは、このくらい使えるとして、、、

 貯金もそろそろしないとだよな、、、

 ってなると、残りがこれっぽっち(諭吉さん二枚と小銭が数枚)か、、、

 もう少し、買えるかな?(アホな奴の考え)

 ここは、堅実に行こう!(正しい考え)

 うーん、悩むな、、、

 そんなことを考えながら歩いていたから、気が付けば車道に。

 、、、当然、車に轢かれました、、、。

 完全にやらかしたなっと、朦朧とする意識の中で思いながら、そこで視界が途絶えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る