身体が弱くて死んでしまった私は転生した異世界でも身体が弱くて、そんな私にも王子は一生懸命に尽くしてくれました
夜炎 伯空
前編
「私、もうすぐ死んじゃうんだよね……」
病院のベッドに横になりながら、私は呟いた。
でも、不思議と涙は出てこなかった。
いつこの世から離れることになってもおかしくはない。
私はずっとそう思っていたから。
私は生まれた時から、ずっと身体が弱くて入院と通院を繰り返していた。
「でも、大好きだった未完の本を最後まで読めなくなっちゃうのは少し悲しいかも」
私は外で元気に過ごせない代わりに、本をたくさん読んできた。
中には連載が終わっていない本も当然ある。
その本を読めなくなることが、唯一心残りだった。
一ヶ月後。
そんな私にとうとう死が訪れた。
◇
「ここは?」
あれ、私って死んだんじゃないの?
私は気がつくと、ベッドの上に横になっていた。
辺りを見渡すが、中世の王宮にある部屋の設えが
「ああ、ようやく目を覚まされたのですね、アイラース」
……アイラースって誰?
もしかして、これって本で読んだことのある異世界転生?
「あなたは?」
「あ、宮廷医が言っていましたが、記憶を失っているかもしれないんですよね……。では、改めて自己紹介をしますが、私はこの王国の第一王子クレイシアと言います。そして、あなたは私の婚約者のアイラースです」
「婚約者?」
私が王子様と?
そんな恋愛小説みたいな話が本当にあるのだろうか。
私は人生を諦めていたのに、異世界に転生をして、王子様が婚約者だなんて。
「コホッ、コホッ!」
あれ、なんだろ?
転生して別の身体になったはずなのに、相変わらず身体が重い。
「無理はなさらないでください。一時は命を落としかねないほど、体調を崩していたのですから」
それって、この世界でも私は身体が弱い人間ってこと?
そんなのって……
異世界に転生をして、ようやく元気に動き回れると思ったのに、結局は身体が弱いままだなんて。
「申し訳ございません、クレイシア王子。こんな私と婚約関係だなんて。今すぐにでも婚約を解消して、他のもっと素敵な人を見つけてください」
一度死んだ時に、家族にはものすごく悲しい思いをさせてしまった。
そんな思いを、憧れの異世界の王子様にまで経験させたくない。
「え? あ、そうか、記憶を失っているから……」
「どうかされましたか?」
「いえ、まるで別人のようだと思いまして」
「申し訳ございません、記憶を失ってしまいましたので」
嘘をつくことは胸が痛かったが、転生して今は違う人になっていますので、とはとても言えなかった。
「あ、こちらこそ、病み上がりにも関わらず、悩ませるようなことを話してしまい、申し訳ありません。ですが、私はあなたとの婚約を解消するつもりはありませんよ。たとえ短い人生になるようなことがあったとしても、そんなことは言わずに、どうか
クレイシア王子がそう言いながら、悲しそうな表情をされたため、それ以上は何も言わなかった。
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