第13話
高さがだんだん変わってしまった畝立ても終わったところで、俺はポムテルの種芋を植えることにした。
種芋からはすでに芽が出ているので、すぐに植えることができる。
ジャガイモなんかだと、芽出しという作業を行なう場合もある。
芽出しは種芋を植える2週間ほど前から日光に当てて種芋から芽を出させる作業だ。
しないといけない作業、というわけではないのだが、芽出しを行ってから植えた方がそれぞれの種芋から発芽するタイミングも揃いやすく、その後の成長もスムーズになると言われている。
ちなみに俺は芽出しを行う派の人間だ。
俺はポムテルの種芋を植えるために、畝の真ん中に溝を作ることにした。
溝にポムテルの種芋を30センチ程の間隔で置いていき、土をかぶせることで他の植物でいうところの種まきは終わりだ。
あとは水を撒いておくだけでそのうち芽が出るだろう。
そして、俺は水を撒いている途中あることを思い出した。
「……ジャガイモだとあまり水をやらない方がいいんだっけ?」
ややうろ覚えな部分もあるが、水をやりすぎると湿った環境が続いてしまい、ジャガイモに良くないと聞いたことがある。
「ポムテルの場合はどうなんだろうな?」
まあ、この機会だし水を毎日やる苗と土が乾いてきてから水をやる苗に分けてみることにするか。色々面白い発見があるかもしれないし。
俺は水やりが終わった後、特にやることもないので家の裏にある斜面で日向ぼっこをすることにした。
小川が流れるせせらぎを聞きながら、時折吹くそよ風が体に当たってとても心地よかった。
しばらくすると眠気が襲ってきたが、俺はその眠気に抗うことはせず、ゆっくりと眠りに落ちていった。
◇
「……ハッ!寝過ぎたか!」
日向ぼっこがとても心地良すぎてしばらくの間ぐっすり眠ってしまった。
太陽の位置を確認すると、すでに昼は過ぎているようだった。
「今何時なんだろうな……とりあえず飯でも食うか」
そうして俺は家に戻って昼食を摂ることにした。
家に入って補給ボックスの時計を見ると、時刻はすでに2時近くになっていた。
数時間昼寝してしまったんだな……。まあこんなにいい天気なんだし、うたた寝してしまったのも仕方ない。そういうことにしよう。
補給ボックスの扉を開けると、中にはパスタのようなものが入っていた。
俺は出てきた昼食に『鑑定』を発動した。
◯メイトソースのパスタ◯
メイトとさまざまな調味料を入れて煮込んだソースをブレイから作られたパスタにかけたもの。
「……またネタバレじゃないのこれ?」
メイトっていうのは多分トマトだろう。
だってパスタにかかっているソースは赤いし、酸味のあるさっぱりした香りが漂ってくる。
パスタも基本は小麦粉から作られるはずだから、ブレイってやつが小麦に当たるんだろう。
「何が育つのかわからない楽しみがどんどん減っていくじゃねえかよ!」
毎回補給ボックスにネタバレをされるのはどうも気にいらない。カミラのやつ、その辺は少し考えてくれてもいいんじゃないか?
俺は次からは絶対に『鑑定』をしないと心に決めた。
夕食の後は、昨日のように『錬金』をやってみることにした。
「昨日は鉄鉱石とレッドドラゴンの鱗を錬金しようとして失敗したんだったっけ?」
たしか、その2つを『錬金』しようとしてもなぜか鉄鉱石から鉄のインゴットしか作り出すことができなかった。
「試したことのない組み合わせを色々混ぜてみようかな」
そうして俺は、触ると温かさを感じるエクセント鉱石とレッドドラゴンの鱗、そしてラビランの砂を素材として『錬金』をすることにした。
「よし、やってみるかな……『錬金』」
そうして『錬金』を発動させた俺は、胸の奥から込み上げる気持ち悪さと、頭をカナヅチで叩かれるような激しい頭痛と共に気を失ってしまったのだった。
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