深淵の底
駄々流されて行くだけの細く或る未知、先々では補足の途。
これら、
蜃気楼のような永遠をこびり付かせるような、
走馬灯のような今を。
白昼夢に見せるような、
曖昧な記憶に蓄積された作り事に近い思い出を、捻じ曲げては砂糖菓子で重ねたような、あまいコトバで塗り込めていくと。
新鮮な生と死が息吹として おおらかな真相を少しづつ 見出そうとしている。
親から子へ友から伴侶へ繋がれていく想いは枷のように重く 有難くも複雑に入れ込まれたビスマスの匣の 美しいだけの紋様を準え、この手で拾い集めた情を末期に祟る輪廻と撒かれ、累増する奢りの夢路を、ただ正しいものとして開かせると。
海岸線を辿るように視界を舐め捕ると。肌に感じる潮風と生きた心地がした。
羽を休めた小鳥が水辺にて己が姿をうつすような、一閃が貫く。
心の臓を掠め倒れ込んだモノから色が溢れかえる、モノクロの水面は赤茶けて血のかおりに満ち、ぽたぽたと剥離して震え、また大層なところに放たれた身はぼろぼろと崩れ、にぃと破顔して見せた、吐き気がするほど下卑た 自身と対面し頷く。
少し躊躇してから仕方なく近づいてそのものが絶命するさまを眺めて見たい。
憐れにも無様に這いつくばってなお生きようと懸命に向かう姿を、悠々としゃがみこんで覗き込む。
未来はこの身に宿り続けている。
ならばこのデタラメなパステル画を、破り盗られた一枚一枚を その手に握らせることが得策のように思え、幼少の己を潰すように無碍に踏みつけ、てのひらで
軽やかな熱が身を刺すばかりに自らの身を嬲り殺すように
なにに祈るのかわかりゃしないのに 指を組んで頑なに耐える、ちいさきものと傀儡の魂を、汲み取るような涙が左目から大粒に零したシーグラスの塚に気づく時まで。
そうして自分の胸を突いてそれが光を浴びて浄化されるのを黙って、小魚達が群がるのを、遺体から溢れた欠伸を反すような感じで、つつ嗄れる泡が爆ぜて 刹那の思い出としてあべこべな旋律に乗せた。
切ないような懐かしいような新緑と雨の香りに浸り、変え難い記憶に塗り替えて行くばかりの春まだ浅い今にひたり独りと或る。
寂しくはないのだろう。これで、すこし垣間見た憎悪を自らの手で母なる海に還しただけだった。
著しいときの歪みが饐えに撚り、集められた記憶を紐解かせて。
深淵の底へ就く 海の俯角から抜け出す宵とともに逝く。
入り相を見渡すだけの チカラも暮らしもここには無い。
2022年4月18日 17:20
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