【急襲】


 通称「都内異常連続猟奇殺人事件」。

 東京都各所にて発生している、無残にして陰惨、同時に動機・犯人像一切不明の怪事件は、さすがに警察組織全体により注目され、調査が行われている。


 その調査状況は、一般人が想定するよりも遥かに進められてはいるものの、初期に発生した各事件の初動調査が遅れた事や、当初は各事件の関連性を重要視していなかった操作方針が災いし、結果的に後手後手に回ってしまった感は否めなかった。


 現在、ネットを中心に広まっている猟奇殺人事件は、渋谷区の雑居ビルの件をはじめ、目黒、江戸川、目白、祐天寺、新宿歌舞伎町で発生したものが話題に上がっているが、実はそれ以外にも、同様のものと思われる事件が散見されていた。

 ある時期を境に、突如こういった事件が起きた事に関し、警視庁は「実行犯の裏で犯行を指揮している存在がいる可能性」も考慮され、様々な方面からの調査を極秘裏に行っていた。


 だがしかし、それにも関わらず、決定的な情報は一切掴めていない。

 それどころか、実行犯の姿、犯行に及ぶ凶器すらもいまだに特定出来ない状況である。


 だが一方で、科警研による調査はかなり進められており、各事件における状況証拠・物的証拠からなる「真実」の一部が、紐解かれつつあった。


 科警研が導き出した、「都内異常連続猟奇殺人事件」の状況推測は、以下の通り。


 1.実行犯は、「人間を捕食する」ことを目的に行動している可能性が著しく高い。

 2.実行犯は人間ではなく、それよりも遥かに巨大かつ強靭な肉体を持っている生物である。

 3.実行犯は、唐突に事件現場に出現し、被害者を急襲している。犯行現場への移動経路は特定困難。

 4.被害者には関連性及び特定の条件は認められず、まさに「無差別」である。

 5.実行犯は、犯行後現場から殆ど移動せず、何かしらの手段でその場から逃走を図っている可能性が著しく高い。


 同時に、この結果と用賀・祐天寺で非常に多くの一般人が目撃した「トカゲのような頭部と尾を持つ三メートルほどの巨人」複数についての、SNS上の証言や写真、動画が決め手となり、警視庁は本件を正式に「非人間的な未知の生命体による凶行」と判断。

 ならびに、そのような食人生物が都内に跋扈しているという真実を公表することで、民間にパニックが発生する危険性を考慮し、警察組織及び関連報道メディアに対して「緘口令」を敷く事となる。


 このような状況に於いて、桐沢大が述べている情報が全て真実であるならば、それは劇的な進展に繋がる。

 そこまでは、司も高原も即座に判断出来た。


 であるなら、問題はただ一つ。

 その情報の真贋。

 これが、桐沢に求められている最大の要点だ。


 加えて司は、もう一つの関連情報を、桐沢から引き出そうと試みていた。

 それが、「未知の巨大生物を駆逐可能な、謎の少女」の存在だ。


 拳銃の弾を弾き返し、ダメージを全く受けない怪物を、徒手空拳であっという間に撃退してしまう性能。

 明らかに人間の能力を超越しているが、それは一体何に基くものなのか。

 あの少女は戦闘用のロボットなのか、或いは特別な攻撃力を発揮する強化服(パワードスーツ)のようなものなのか。

 そこを突き止めることによっては、警察は調査に加え、巨大生物への決定的な対抗手段を得る事が適うだろう。

 司の着目点はそこであり、「XENO」なるものに詳しいとする桐沢が、その情報を断片でも持っている可能性は非常に高い。


 高原には言わなかったが、司が真に求めているのは、そちらの方だ。

 


 桐沢を京王プラザホテルに案内するため、司は取調室のドアを開けた。








 美神戦隊アンナセイヴァー


 第44話 【急襲】






 一時間後、京王プラザホテルの24階にあるスタンダードルームに入った桐沢は、部屋に入るなり舌打ちをした。


「狭いな」


「文句言うな」


 感情を込めず、司が返す。


「俺がお前達警察にとって、どれだけ重要な存在なのか、まだわかっていないようだな。

 俺ほどにもなると、スイートルームくらいは当然――」


「まだ何も情報提供してない分際で、偉そうな事言うな!」


 今度は、高原がブチ切れる。

 だがその肩を叩きながら、司が冷酷な一言を告げる。


「よし、高原後は頼んだぞ」


「は?」


「見ての通り、ここはツインルームだ。

 お前がここで彼を警護してやってくれ」


「は、はぁ?! ここでですかぁ?!

 べ、別室は……」


 目を剥いて驚く高原に、司は「諦めろ」といわんがばかりの態度を示す。

 

「我らの尊敬する偉大なる課長様が、泣く泣く身銭を切ってくださったんだ。

 我らには、これ以上の負担を上長に強いることなんて、とてもとても出来やしないさ」


「ホンっとに、司さんって、課長に対しては鬼みたいなこと平然としますね……」


「まぁ、こういう時の為にあいつには課長になってもらったんだ。

 せいぜい、役割を果たして頂くさ」


「うわぁ……」


「なんだか楽しそうだな、お前ら」


 珍獣でも見るような目つきで、桐沢はバスルームへと消えていく。

 水音が微かに聞こえて来たのを確認すると、司は声を潜めて囁いた。


「とりあえず、俺が戻ってくるまでは、お前がつきっきりで奴を見ていろ。

 もし、あいつが何か貴重な情報を話そうとしたら、ボイレコで録音でもしとけ」


「えぇ……」


「あと、とにかく他には誰も入れるな。

 ルームサービスも入り口で受け取るようにしておけよ」


「使っていいんですか? ルームサービス?」


「ああ、好きにしろ。

 どうせ俺の金じゃない」


「つ、司さぁん……知りませんよぉ」


「じゃあな、俺は猛者共の相手をしてくる」


「なるべく早く戻って来てくださいよぉ……」


 心細そうな声で、高原が見送る。

 部屋を出た司は、24階とそこまでのルートを厳重に確認し、非常口の位置をチェックすると、足早にホテルを出た。


 部屋に取り残された高原は、一人寂しくスマホでソシャゲを始める。





 司の想像を上回る速さで設置された「都内異常連続猟奇殺人事件」捜査本部は、都内各署より選りすぐりの捜査官が集まり、早速初回の会議が行われた。

 現状の再確認や今後の指針や対策が検討されるが、今のところ、その内容は今まで何度も繰り返されて来た会議と大差ない。

 都内各所の警備強化、装備の見直しなど、有益とは思えない提案が飛び交う。

 このままでは、何年経っても進展がないなと考えた司が発言しようとした時、別な者が声を上げた。


「すみません、少々脱線気味な話となるのですが。

 この中で、“吉祥寺研究所”という名前を聞いたことがある方はおられますでしょうか?」


 その言葉に、司はピクリと反応する。

 桐沢が述べていた、彼がかつて勤めていたという研究施設だった筈。

 発言者は、先日も怪事件が発生したエリアを管轄する、目黒署の女刑事だ。

 名前は、宮藤(みやふじ)。

 

 宮藤は、誰も反応しないことに溜息をつくと、更に話を続けた。


「実はこの研究所に以前勤務していた者が、本件について有力な情報を持っているとして、先日弊所に保護を求めて来ました。

 残念ながら、その発言の真贋を確認する前に、姿を消してしまったのですが」


 宮藤の話している者が、桐沢であることはすぐにわかった。

 宮藤の発言に対し、他の者達は「それがどうした」「その情報の内容は?」といった、責め口調での言葉を投げかける。

 自分達は何も有益な発言をしていないのに、こういう時だけは元気なものだ、と司は鼻で笑った。


「はい、この者の発言によりますと、真犯人とされている正体不明の生命体は、吉祥寺研究所の関係者を狙って犯行を行っているという側面もあるようです。

 事実、この者も目黒区内で何度かバケモノに襲われたという旨の発言をしておりまして」


「その男だけが、何故殺されずに生き永らえているのか、不思議ですな」


 挙手もせず、司が呟く。

 その発言に反応し、宮藤はこちらに顔を向けた。


「はい、それなのですが。

 どうやら“ある者”に助けられたというのです」


「ある者?」


「はい」


 宮藤は、何か納得が行かなさそうな表情で、司の顔を覗き込んで来る。


 その後、宮藤の発言に対して様々な意見や暴言が飛び交ったが、初回の会議は、ありきたりの「都内各所防衛強化と犯行の未然阻止を目的としたパトロール強化」という方針が固まったところで幕を閉じた。



 会議室から出た直後、宮藤が、司の許に駆け寄ってきた。


「あの、先ほどの件なんですけど」


「ああ」


「司さんは、ご存知なんですね? 桐沢大のことを」


「ほぉ、何故そう思いました?」


「私は“その者”と言っただけで、性別は言わなかったのに、貴方は“男”と言いましたよね?」


「気付いてくれましたか。さすがですな」


 ニヤリと不適に微笑むと、司は宮藤を別室に案内した。



 宮藤加奈子(みやふじ かなこ)。

 三十代後半くらいの、かか小太りで背が低い、何処にでもいそうな平凡な姿の女性。

 しかし、その目には芯の強さを感じさせるものがある。

 綺麗に整えたショートカットの髪に軽く手を添え、宮藤は先ほどより小さな会議室で、司と向かい合うように座った。


 司は、今朝桐沢が保護を求めて来た事と、京王プラザホテルで宿泊させている事、そして彼の述べていた情報を報告した。

 それを聞いた宮藤は、やや青ざめた表情になる。


「そ、そこまでの話は聞いておりませんでした!

 ぜ、XENO……というのですか?

 その現物を、彼が持っていると?」


「発言を鵜呑みにすれば、ですね。

 ただ、奴はそれの情報開示を条件に、自分の保護を訴えている。

 今、奴についての待遇をどうするか、うちの上が検討中ってとこです」


「な、なるほど……」


 司の発言が相当衝撃的だったのか、宮藤はショックが隠せないようだ。

 

 宮藤は、司に様々な報告をした。

 その中に、気になる情報が含まれていることに、注目する。


「――巨大な、ロボット?」


「ええ、まあ巨大と言っても、子供番組に出てくるような見上げるほど大きなものではないのですけど」


 宮藤の話は、こういうものだった。

 今朝方、天台宗 松林山 大圓寺辺りを流れる目黒川付近で、大雨の中、巨大な生物と黒一色のロボットのようなものが戦闘を行い、その後に空を飛んで消えたという通報が、目黒署に行われていたという。

 またこれとは別に、SNS上でも同様の話が上がっており、遠距離撮影とはいえ現場写真もアップされていたという。

 司は、これが島浦の話していた件だなと察知したが、宮藤の話はまだ続く。


「ただですね、このロボットなんですが――写真がないんですよ」


「どういうことです?」


「これを見てください。おわかりになりますか?」


 宮藤は、自分のスマホを掲げ、該当の書き込みを示す。

 それは、たまたま近隣のビルにいた投稿者が撮影したもので、四枚の連続写真だが、巨大生物と思われる影はあるものの、ロボットに相当するシルエットは全く写っていない。

 にも関わらず、投稿されたテキスト内では「黒いロボットがいた筈なのに、なんでか写ってないんだ!」といった発言が確認された。


「この投稿者が夢を見ていただけなのでは?」


「夢はともかく、誤認の可能性はありますね。

 でも、この写真を良く見てください。

 このバケモノの影、四枚目で真っ二つになってるみたいなんです」


「――何?」


 良く見ると、確かに影は、最後の一枚だけ上下に分割されて倒れかけているように見える。

 手前の三枚と比較しただけでは、何が起こっているのか判断が難しい。

 だが投稿内容には「ロボットがビームサーベルみたいなので斬った」と書かれている。

 言われてみれば、確かに残光とも取れるような、うっすらとした不自然な光のラインも見て取れはする。

 だが、これをロボットなるものの存在証明とするには、いささか難を感じざるを得ない。


「なんとも言えませんが、ここで言うロボットが、桐沢を助けていたと?」


「はぁ、信憑性は確かに薄いのですけど、今の時点でXENO? に襲われて生きているのは、現状この男性だけなのです。

 他の被害者の惨状を考えるに、誰かの助けがあって生き延びたというのは、まんざらありえない話でもないのかと私は思いまして」


 “実は俺もその一人なんだけどな”と、心の中で呟く。

 しかし、片や黒いロボット、片やピンク色のコスプレ少女。

 XENOを倒して助けてくれるのはいいけれど、あまりにも違いがあり過ぎて、司はつい苦笑してしまった。


「いや失礼。

 であれば、これは当事者から詳しい話を聞いた方が良さそうですな」


「ええ、私もそう思います。

 司さん、宜しければ、私を桐沢に逢わせて頂くことは出来ませんか?」


 宮藤の申し出に、司は頷く。


「そうですね、今、うちの若いのが付き添っていますが、そろそろ交代してやらなければならない時刻ですので、宜しければご一緒に」


「はい、助かります!」


 満面の笑顔で、宮藤が頷いた。

 




 再び京王プラザホテルにやって来た司は、宮藤を伴って24階を目指す。

 高原には事前にLINEを飛ばしたが、既読は付いたものの返事はない。

 構う事ないと、二人はそのまま目的の部屋を目指した。


 ドアをノックすると、しばらくの間を置いて、高原が顔を出す。

 何故か、その顔はやや赤い。


「俺だ。

 メールは読んだな」


「ああ、はい。

 そちらの方が、宮藤さんですか? ども」


「初めまして。目黒署の宮藤と申しま――

 あの、もしかして、お酒を……?」


「え? あ、いやその……!」


 突然うろたえ出す高原の背後から、桐沢の怒声が響く。


「おい! 何をしている! お前の番だぞ!」


「何やってんだいったい?」


「あ、その、暇なんでアイツとゲームをちょっと……」


「まあいい、入るぞ」


 半ば無理やり入り込むと、部屋のベッドの上に、花札が散らばっている。

 そして、ベッドに寄せられたテーブルの上には、酒瓶と二つのグラスが。

 銘柄からかなり高級なブランデーであることを察した司は、咄嗟に酒瓶を持ち上げ、残りの量を確かめる。


 バスローブ姿の桐沢は、つまらなそうな顔で司と宮藤を見ると、フンと鼻を鳴らした。

 手に持っていた花札を、放り投げる。


「まったく、コイツは弱すぎて話にならん。

 ん? その女は、目黒署で会った奴だな」


「どうも、こんばんは。

 桐沢さん、お話を伺いに、司さんに無理を言って連れて来てもらいました。

 よろしいですか?」


「ああ……好きにしろ」


「つ、司さぁん……コイツ、なんとかしてぇ」


「賭けの代わりに酒飲まされたのか。

 まったく、冷たい水で顔でも洗って来い。

 そのままじゃ署に帰れんぞ?」


「ふぁ~い……」


 高原が退席した後、ベッドをソファ代わりに、司と宮藤が並んで座る。

 桐沢と向かい合うと、宮藤は早速話を切り出し始めた。


 彼女が聞くのは、司が伝え聞いた情報について。

 一度会ったことがある相手なせいか、或いは若干酒が入って大胆になっているのか、桐沢は思ってた以上に饒舌に話し始める。

 宮藤は、その話の一つひとつに頷き、顔を寄せてしっかりと聞いている。


 桐沢は、自分を助けるロボットの存在は認識していたが、その素性まではわからないと述べた。

 ただ、助けられたのは一度だけではなく、実は既に三回以上もXENOを撃退してくれたのだという。


「何故、君だけがそのロボットに救われるのか、心当たりはあるのか?」


「さぁ。だが、本当に助けられたのが俺だけなのかはわからんぞ?

 もしかしたら、他の所員も助けているかもしれん」


「確かにそうだな」


 そして、話は「XENOの幼体」に触れていく。


「そのXENOの幼体というものは、桐沢さんが持っていらっしゃる?」


「そんな訳がない。

 XENOは、マイナス20度以下の環境でなければ長期保管は出来ない。

 持ち歩くなら、大型の冷凍設備が必要だ」


「なるほど、では、具体的には何処にあるのですか?」


「それは今は話せないな。

 俺の保護を警察が保障してくれなければな」


「確かにそうですね。

 でも、と仰るからには、保管場所はきちんと確保して、管理も行ってらっしゃると?」


「当然だ!」


 宮藤の質問に、桐沢は胸を張って答える。

 だが、司は何故かそのやりとりに、少々違和感を覚えた。

 

「宮藤さん。

 XENOとやらの保管場所については、後でゆっくり確認を取ればいい。

 今はそれよりも――」


「いえ、XENOの幼体の保管場所を知るのが、最優先です。

 或いは……」


「宮藤さん?」


 宮藤は突然立ち上がると、何故か出入り口のドアの方へ歩いていく。

 ドアを背にして立ち尽くすと、何故かにやりと不気味に微笑んだ。


「どうした、宮藤さん。

 具合でも悪いのですか?」


 心配そうに尋ねる司に、宮藤は首を横に振る。

 その時、ようやく高原が戻って来た。

 ドアの前に立っている宮藤を見て、短い悲鳴を上げる。


「な、なんですかもう、びっくりするなあ!」


「ごめんなさいね。

 でも、びっくりするのはこれからなの」


「は?」


 不思議そうな顔をする高原の目前で、突如、宮藤が身体を小刻みに振るわせ始めた。

 しかも、それは人が意図的に行える動きではなく、明らかに何か異常が起きているレベルの激しさだ。

 言い知れぬ不気味さを感じた高原は、即座に司の傍に退避する。

 それと同時に、桐沢が悲鳴を上げた。


「こ、こいつ! XENOだ!」


「は?」


「この女! XENOなんだぁっ!!」


「待てよ桐沢、お前、何言って――」


「窓際へ! 逃げろ!!」


 異常事態を察した司が、二人を部屋の一番奥へ押し出した。

 それと同時に、宮藤の身体が異常に膨らみ始めた。

 服が裂け、顔が膨張し、四肢が捩れて行く。

 まるで死体のように青ざめ、白目を剥いた宮藤の顔は、ばっくりと割れ、中から大きな“何か”がせり出してきた。


 その様子は、まるでSFXの特撮技術映像。

 だが、変形をするごとに肉片は血しぶきが周囲に飛び散っていき、生臭い匂いが充満する。

 それが現実だと頭が認識するのに、若干の時間を要した。


 割れた頭は完全にめくれ上がり、豚のような顔が露出する。

 と同時に、体つきが急激に変化し、何故か筋骨隆々な男性の体格に変貌していく。

 更に肥大化し、二メートル半程度にまで肥大化した“宮藤だった者”は、豚の頭を持った巨人へと変身した。


「な……?!」


「う、うそぉぉぉ!?」


「み、見たか! これが、これがXENOだぁ!!」


 かつてアンナローグが、井村邸にて撃退した「UC-01:オーク」。

 それと同じような姿になった宮藤は、ゆっくりと、窓際に三人を追い詰めていく。

 紫色に濁った舌が、べろりと上顎を舐める。

 次の瞬間、身も凍るようなおぞましい声で、オークが――喋った。



『或いは、今この場であなた達を食ってしまえば、それで万事解決ですねぇ~~』



 懐に手を伸ばしながら、司は、冷静さを欠いた表情を浮かべながら、考えた。



(こいつら、知性を持っていたのか?!)



 

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