増える日記帳と増えない思い出
武海 進
増える日記帳と増えない思い出
私は小学生の頃から日記をつけている。
始めたきっかけは単純なもので、当時ハマっていたアニメの日記帳を文具コーナーで見つけた私が母にねだったところ、買う代わりに毎日ちゃんと日記をつけることと引き換えに買ってもらったことだ。
飽きっぽい性格で何でも直ぐに投げ出す癖を直す目的で母は買ってくれたようだが、以外にも私は日記をつけることに私はハマった。
文書を書くのは嫌いではあったが、その日あった楽しかったことを思い出しながすながら書くのは楽しかったからだ。
それに、しばらくしてから読み返すことで思い出を振り返られるというのもハマった理由だ。
そんな訳で母はどうせ今回もやらせてはみたが、すぐ飽きるだろうと思っていたようだが、ハマったことで毎日日記をつける私に驚きながらも、ページが無くなると直ぐに新しい物買ってくれた。
そのおかげもあって、私は中学、高校、大学と、上がっていきながらも私は日記をつけ続け、遂には社会人になっても今でも毎日つけている。
「はあ、今日も終電かあ。冷蔵庫空だからコンビニ寄って帰らないと……」
会社を出た私はトボトボ家路に着く。
社会人になった私は毎日毎日遅くまで働き、いつも家に着くころにはおよそピチピチの二十代前半とは思えない程に老けて見える始末だ。
「あのクソハゲ、今日もセクハラしやがって。お局ババアもグチグチグチグチ言いやがって」
缶チューハイ片手に私は今日も日記という名の愚痴や悪口を書く。
「ハア、私何やってんだろ……」
日記を書き終えて缶に残っていたチューハイを一気に飲み干した私は、大きくため息をつく。
そもそも楽しい思い出を書くのが好きでずっと日記をつけているのに、今はただストレス叩きつけているだけになってしまっている。
「会社、辞めよっかな……」
パラパラと社会人になってからの日記を振り返った私は、ストレスの捌け口になって一切思い出が掛かれていない日記に虚しさを感じた。
この先もそんな虚しい日記を書き続けるくらいなら、転職に挑戦しようと思った。
学生時代書いていたように、楽しい日記を再び書く為に。
増える日記帳と増えない思い出 武海 進 @shin_takeumi
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