暴き暴かれるTruth
第13話 FINAL WARSの幕開け
(兄さんをあの街で見たの……)
「二葉さんの兄さんかぁ……どんなだと思う、アキレス?」
「どんな存在かと聞かれてもなぁ……逆に紅輝はどう思っているんだ、蒼依の兄について」
「うーん……二葉さんの兄さんともなれば、めちゃめちゃ厳しいって雰囲気全開の人かもしれないな」
「私は生憎兄妹についてのデータが不足していてな……意見を求められても良い答えを返せる気がしないのだ。それと……妙に夏服姿がしっくりくるな」
「あ、やっぱりアキレスもそう思う?ずっと暑かったからさぁ……もーちょい薄着になりたいって思ってたんだよ」
「……だが、この数ヶ月間の中で私達は大きな力を2つも手にしたが……依然として敵に目立った動きがないのがどうも気がかりでな……」
「確かに……こないだ海ヶ丘で襲ってきたのも結局あの青い空かした野郎とヴェクターだけだったもんな……」
二人は家を出た後も学校へ向かう道中に合同会議までの自分達の戦歴を振り返っていた。
「朝から浮かない顔してるけど、どうかしたの……一ノ瀬君」
「い、いや……何でもないよ……!」
(誰のせいだと思ってるんだよ、二葉さん!)
玄関で顔色を変えずに悩んだような様子のまま靴を履き替えていた彼に対して、たまたま近くを通りかかった蒼依が声をかけてきた。
「そう……ならいいわ。それと、今日から夏期日課で動くみたいだけどこれまで通り寝ないように気をつけてね」
「もう寝ないって!寝たら次起きた時高確率で汗だくになってるだろうし」
「その言葉、信じてもいいのかしら?」
「あれ……もしかして信用ないって感じ?」
紅輝からの問いかけに対し蒼依はジト目を向けつつ無言の圧を送り続けた。
―その頃、寂れたゲームセンター跡では珍しくヴェルフェを筆頭とした4人が顔を合わせていたが、マモンは不満げな様子でヴェルフェ達を睨みつけていた。
「ヴェクターは本当にコマを増やす気はあるのか?こないだからずっとアキレスの事ばっか狙ってよぉ!」
「落ち着きなさいマモン……とはいえ、ここまで固執して私達に何の仕送りもない事は確かに妙ですねぇ……」
「んだとテメェ……もう信用ならねぇ!こうなりゃ俺様が直々にコマの元をばら撒いてやる……!」
堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりにマモンはヴェクターを突き飛ばしつつ怪人態へ変貌するとそのまま町中へと向かった。
「相変わらず感情に流されて動くんだね……マモンは。それで、アタシらをわざわざ集めて何を話すつもりだい?」
「ハデス様復活の件について……私から一つ、名案が浮かんだので話しておこうと思いましてね」
「名案……アンタの事だ、とんでもない物なのだろう?」
「ヴェクターは現在、電脳世界で発生した様々なバグを取り込んでいます……そこで、このハデス様の魂が封じ込められたストーンを奴の体に埋め込むのです」
「ふむ……同じウィルス体同士で急速な成長を促すと」
「流石はベルゼブブ、察しが良いですね……それに、種はもう1つ埋めてありますから……後はこれを埋め込みさえすれば我々の主がこの世界に再臨なさるという訳だ」
「それなら今すぐにでもヴェクターとやらにそれを埋め込みに行けばいいじゃないか。何故やらない?」
「彼は暫く泳がせます……どうせ近く倒れるでしょうから……クックックッ」
―翌日 空船大型ショッピングモール
「あれ、藍人じゃん……何で空船に来てるんだ?」
「僕はたまたま、散歩ついでに立ち寄っただけなんだ……そういう紅輝くんはどうしたの?」
「うーん……俺も正直に言ってしまうと散歩の延長線……かな?」
「そっか……ならさ、少し僕の話を聞いてくれないかな?ジュースなら奢るから」
そうして二人は互いにジュースを片手にすると近くのベンチに座ると、早速藍人が口を開いて話を始めた。
「僕にはさ、同い年の妹がいるんだ……いや、居たって表現の方がいいかも」
(あれ、そう言えば蒼依もこないだ海ヶ丘で兄さんらしき人にあったとか言ってたな……)
「その子は元々僕と同じ零城家の人間として育つはずだったんだ」
「育つはずだった……って事は何か訳があって別れる事になったのか?」
「うん……僕は当時、父さんが怪しい人達と裏で繫がってる事、そして進められていた計画の中に妹を使ったものがあって……それが行われる前に妹だけは何としてでも守ろうって、ある家の知り合いの人に電話をしたんだ……」
「それで妹さんは助かったのか?」
「うん……苗字を変えて、別の家の子になったんだ。当時の僕の力じゃ妹を守りきれるだけの力が無かったんだ……」
藍人は余程悔しかったのか、話すうちに目に涙を浮かべて拳を強く握っていた。
「藍人……あのさ、その妹さん……俺にも探させてくれないかな。だってさ、藍人は俺の大切な友達だし……兄妹が離れ離れだなんて絶対良くないって!」
「紅輝くん……」
「俺、小さい頃に父さんが死んじゃってさ……大切な人がいなくなった時の寂しさは今でもまだ、時々思い出しちゃうんだ。それってさ……嫌だろ?」
「……無理だよ。だって、妹はもう僕の事を覚えてないかもしれないんだ……僕があの子を……事情の説明すらしないまま突き放すような形でその家の人達に渡したんだから……僕はダメ兄貴なんだ……」
「そう思うんだったら……もっかい妹さんと会って話をしてみろよ!例え向こうが覚えてなかったとしても、そんなの関係ない……大事なのは二人の間に確かな思い出がある事なんだから!」
紅輝は自分を過小に評価した上で泣き始めた藍人の両肩に手を乗せると、珍しく大きめの声で自分の思いをぶつけた。
「紅輝くん……!」
「妹さんに会う機会なら……俺が何とかして用意する……だから藍人は妹さんと何を話すか考えればいいよ」
「ありがとう……君は本当に優しいね……僕なんかよりも、ずっと……っ!?」
藍人はいきなり胸を押さえて苦しみ始めると、そのまま彼の背面から黒い靄が放たれ、次第に彼の体をすっぽりと包み込んでしまった。
そして……苦しむ彼の声は次第に消えていき、その靄がはれる頃に彼の立っていた場所には紅輝とアキレスの宿敵……ヴェクターが立っていた。
「なっ……まさか……そんな……なんで……」
『前から藍人には妙な気配を感じていたが……やはり彼の体を依り代としていたか……』
『最っ高だな……その顔。アキレスの言う通り、オレはコイツと契約を交わして体を借りてるんだ……さぁ、どうする?親友だと信じてた奴が実は敵だった訳だ……お前にオレが倒せるかな?』
「嘘だ……こんなのって……」
『くっ……なんて卑劣な……!紅輝、ここは一旦退くんだ……ヴェクターはこのままお前を倒すつもりだ……紅輝、どうした!何故動かない……!』
「……でも、本当に辛いのは藍人なんだ。きっと今も苦しんでる……そして今までも隠してきたんだ……その苦しみから解放する為にも……俺は、退かない!」
ヴェクターからの衝撃的な発言に対して動揺していた紅輝だったが、すぐに心の中で生じたそれを振り払い、拳をギュッと握りつつホルダーからカードを引き抜いた。
「迷うくらいなら……まず動く!後悔して泣きじゃくるのはその後次第だ……アクセスアップ、レッドアキレス!」
『……オペレーション、スタート!』
そして続けてそのカードをライザーに通して彼は変身を完了させ、無言を保ちつつ2本の剣を構えた。
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