一人歩く雪の道

一人歩く雪の道

袖や服に舞い落ちた雪を眺めて、息を吐いた。そういえば最近、一段と寒いななんて思っていたら雪が降ってきた。ふわふわと降ってくる雪を眺める。

 どうにも、この時期は好きになれない。

寒いから、という程よい嘘と真実を混ぜて、心の中で理由を述べる。

 寒いから、嫌い。冬が、嫌い。

面倒くさがって、衣替えをしていなかったがもういい加減、マフラーなり手袋なりを引っ張り出さないといけない。

「あ、マフラー買い換えなくちゃ。」

お気に入りだったマフラーは、もう捨てなくてはいけない。だってあれは。

ふ、と道の向こうを眺めると青い車が見えた。ぐり、と胸の奥を抉られたような感覚がして、吐き気がこみ上げる。

「大丈夫、大丈夫…ちょっとおセンチになってるだけ。」

言い聞かせるように呟けば、少し楽になった気がした。見覚えがある気がした車は、そのまま通り過ぎてゆく。あれから冬が来るのは、2度目。まだ私の指先は冷たいままだ。指先に息を吐きかけて、固まった足を動かす。

 大丈夫だ。私はどこへだっていける。彼がいなくても。


ゆっくりと白く染まっていく道には、私の足跡だけが残った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一人歩く雪の道 @Rin-maron

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ