STARDUST JOURNEY

ほしのみくる

序章 凶兆

 2つの流星をみた。

 言い伝えによればそれは凶兆、死を暗示すると。


「……くないな。急がねば……」


 はるか宇宙の彷徨に超巨大なコロニーがあった。

 誰も立ち寄ることのできない神話に等しき超科学の世界。


――凶兆は今まさに現実のものとならん。


「はぁっ……はぁ、はぁ……はっ……」

 乱れた呼吸で走る白衣の男女。

 

 そして、2人を追う戦闘服を纏う数十名の兵士たちと、先頭を歩む指揮官。マスクから覗く赤銅色の目が彼らを逃がしはしないと語っていた。


「こっちだ、はやくっ」

 赤い照明と警報、屋内のいたるところからガスが漏れ電流が走る。2人の行く先には宙を走る案内灯が避難経路を示す。

 声色から推察するに2人は30代の人間ヒトであろうか。暗がりと煙、明滅する警告灯に反射してハッキリとその顔を捉えることは出来ない。


 グノー語とその他複数の言語で表記された〝危険〟の文字が、透き通る壁肌を滑らかに走っていく。縦横20m程の通りには透明な強化ガラスに囲まれた、摩訶不思議な装置が並ぶ無数の実験室の様な部屋が並んでいる。

 

 逃げるも空しく、通路の先は閉ざされた扉。指揮官は兵士達に下がる様に指示し、前に出て話を始めた。


「無駄なあがきを。君たちの私欲がコココロニーを終わらせるのだ。全宇宙の希望を奪ったのだ! 責任はとってもらおう。」


 しばらくして、2人は目を合わせ諦めたか、大事に抱えていた20㎝大の楕円型のカプセルを差し出す。その中には漿液の様な琥珀色に輝く液体とそこに浮かぶ10㎝にも満たない赤子の様な物体が。

 

 笑みをこぼし言う。

「初めからそうしておけばよかったものを。さぁ、それを渡したまえ」


「あ、あぁ。わかった……」

 男はそのカプセルを渡した。


「素晴らしい。コレが〝賢者の石〟か。」 

 小さく笑みをこぼし、2人の肩を軽く叩くと振り返り兵士達を前に出した。


「君たちはよくやった……だが、もう用済みだ……」

 そう呟くと、片手をあげた。


――!!!!

 兵士たちは即座に構え一斉に発砲した。2人は激しい銃撃により肉塊と化し、一面真っ赤な血で染まった。

 死ぬ間際に握り合った2人の手は宙を舞い、何かを祈るように地に落ちた。

 

 その時――――

「あ、ぐぅぁっ……!?」

 あり得ない程強烈な耳鳴りを感じ、全員がうづくまった。

「な、んだ……?」


 この空間、いやこの宙域を支配するほどの共振……。

 そして、音が弾けた。


 光とも闇とも表せない衝撃――――


 超巨大なそのコロニーは一瞬にして灰塵と帰したのであった。

 生ける者も無機物も全て暗闇の中へと導かれ消えていった。

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