幼馴染と同棲し始めたので日記をつけることにする

華川とうふ

     ♡

 日記なんてものを書くのは小学生以来のことだ。

 別に特別に書くこともないし、なにか思い出に残しておきたいのなら写真とか動画でいいと思う。

 その方がリアルだし、自分の書く文章よりもずっと鮮明にその瞬間を切り取ってくれる。


 だけれど、同姓を始めるにあたって、マドカが言ったんだ。

 せっかく、一緒に住むのだから。

 その時の気持ちを忘れずにいられるように日記をつけようって。

 だから、この部屋には日記帳が二冊ある。

 僕の分とマドカの分。

「赤い日記帳と青い日記帳、どっちがいい?」

 マドカは日記帳を差し出して嬉しそうにいった。

 僕が決められずにいると、マドカはあきれたように笑って片方を僕に押し付けた。

「さあ、今日から日記を書いてね。で、一年後に交換するの。一年分の交換日記って素敵じゃない?」

 そう言ってマドカは細い指で僕に柔らかな2Bの鉛筆を渡してきた。

 短くなったそれは、小学校低学年のころにマドカが使っていたものだ。

 あんまり力を入れて書くと、ノートが銀色の文字とこすれた鉛筆でノートが灰色に染まってしまう。

 だから僕は気をつけて書いているんだ。

「一年後のお互いのために毎日気持ちを綴るってすごくロマンチックだよね」

 マドカはそう言ってほほ笑んだんだ。

 だから、僕はできるだけ毎日のことを細かく書いた。

 マドカがどんな料理を作ってくれたとか、どんな服装をしていたかとか、今日は何月何日かとか。

 できるだけ色んなことを細かく正確に。

 最初のころはマドカは我慢できずに僕の書いている日記をこっそり見るんじゃないかと思った。

 一年後のお楽しみなんて言いながら、きっと僕の日記を読まずにはいられない。

 マドカはそういう性格だから。


 📓📓📓


 今日から幼馴染のあっくんと住むことになった。

      い嬉しい。

 しずっと、計画してきたことだけれど、

 こんなにうまくいくなんて思っていなかった。

 あっくんは思ってるよりもそそっかしい。

 ずっと一緒にいたいねって

 しょうがっこうのころ二人できめたのに

 あっくんはさっさと彼女をつくってしまった

 最初のころは泣いてしまったけれど

 こうやって私のいえに閉じ込めれば

 ずっと一緒にいられるよね♡




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染と同棲し始めたので日記をつけることにする 華川とうふ @hayakawa5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ