寿司を食べて死んだ理由・解答編

 さて答えであります。






















 彼女は最近婚姻したばかりの息子を持つ一人の姑でありました。

 それこそ跡取りを渇望する古めかしい姑。


 お嫁さんにも早く自分に仕えろ、母親になれと異様なほどうるさかったのであります。


 しかし彼女はいわゆる在宅ワーカーで収入も多く、って言うか愛する息子を上回っていたのであります。


 その事をいくら夫や息子から言われても聞く耳持たず、彼女は家庭内で孤立していたのであります。


 そこで家族は彼女を高級寿司屋に連れて行ったのであります。

 実はその店はお嫁さんが嫁入り前から経営コンサルティングをやっていたご贔屓の店、予約もなしにさっと入れたのはまったくお嫁さんのおかげだったのであります。


「まったく、いつまで私を待たせるの!くだらないパソコンなんかいじってないでとっとと専業主婦になって孫の顔を見せなさい!」


 だが彼女はいつもの調子でそう吠えてしまい、それを大将にはっきりと聞かれてしまったのであります。


 そこで大将から彼女の働きをこんこんと説明され、そのショックであの世へとむかってしまったのであります。



「それで葬式をうんたらかんたら言われるほどには二人の心も離れていたのか……」

 と言う事であります。




 結果、夫も息子も、あまりにも情けない死因に愛想を尽かしてしまい、葬儀を丁重に行わない事を決めたのであります。




「うわー……」

「確かにこれはひどいな」

「でもどうして倫子わかったの?」

「そういう年齢だから突然死もあるかなって、それでお寿司もマナーも関係ないと思ったらその場でとんでもないことを言われたって、どうしても認めたくなかったことを突き付けられたらって……」


 見事であります、平林さん。



「しかしそれって本当、まんま倫子、って言うか俺らだよな……」

「ああ、本当にお前の苦労が身にしみるよな、市村…………」

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