42話 王家の紋章
窓から暖かい日差しが差し込む。
私はミホが入れてくれた紅茶をゆっくりと飲み本題を話だした。
「私は元々王家の生まれなんだ。王家と言っても王様とメイドの子で要は隠し子って奴だ。」
私は左手に魔力を込めて紋章を浮かび上がらせ二人に見せた。
「この紋章は王家に代々伝わる力で、私がたまたま引き継いでしまった。この力は、相手の魔法を一つだけコピーできるというものだ。」
「さっきの俺を氷漬けにできたのも紋章の力か……」
オルトは少し納得していたが、ミホは疑問に思ったのか質問してきた。
「その氷の魔法、私が見た感じだと、3層魔法と同等だと思うけど、魔法陣が出ていなかったのは何か関係しているの?」
「私も母から聞いただけで詳しくはないけど、この紋章は本来の魔法発動のプロセスを飛ばして魔装や剣の創造する時と同じ様に発動できる物だと思う。」
「3層魔法を瞬時に……しかもコピーも出来るなんて……」
三層魔法は三つの魔法を同時に発動させるため、術者の技量や才能により詠唱をしたり時間がかかる事も多い。
ミホとは付き合いは長いが秘密にしてきた分、この事に少し驚いていた。
私はもう一つ大切な事をオルトに伝えた。
「それと、ミホは知っているけど、私の寿命はあと数ヵ月なんだ。」
「は? どういう事だよユキ姉!」
「まあ、落ち着きなさいって。私は魔族との戦いで寿命を奪われてしまったんだ。相手が少し特殊で倒した時にはもう残り3年の寿命しかなかったんだ。」
「ユキ姉……」
オルトは少し悲しそうな表情で私を見つめた。
「はぁ、だから嫌だったんだよ。ミホと同じ表情して、辛気臭いぞ」
「それはするでしょ! 大切な友人の寿命があと3年しかないって言われたら!」
「とりあえず、暗い話はここまで。ここからは私のお願いで、この数年でオルトは私以上に強くなったし軍でもやっていけると思う。だからミホのコネでオルトを軍で働かせてやってくれ。」
「私のコネが無くても、軍はいつでも人手不足だから大丈夫よ。オルト君はそれでいいの?」
「元々ユキ姉の金も底を尽きかけていた所だし、剣しか俺には無いから稼げればどこでもいい」
オルトは元の世界に帰る為に軍で情報を集めるメリットもある。
私としても今後のオルトに心配する事も無く気楽に逝く事が出来る。
あとはこの紋章を継承させるだけ……
その後話は終わり、ミホは軍の仕事があると言って帰って行った。
私とオルトは二人っきりになり、オルトはいつものように家事をしてくれている。
家事をしながらオルトがふと私に質問してきた。
「ユキ姉、何か欲しいものとかある?」
「ぷっハハハッ。オルト、もしかして気使ってる?」
「うるさい。忘れてくれ」
オルトは私の寿命があと数ヵ月しかない事を知って考えていたのだろう。
それにしても欲しいものか、貰っても数ヵ月後に私は灰になる訳で……
「そうだ、逆に私がオルトにプレゼントをしよう!」
「は? なんでそうなる」
「いや~、あと数ヵ月しか寿命ないし、オルトも私がいなくなったら寂しいと思うんだよ。だから欲しいもの買ってあげよう。お姉さんに何でも頼みなさい!」
「ユキ姉に何でも……」
「ああ、何でもいいぞ」
オルトは少し考えるそぶりをしていた。
私はベットに寝っ転がりながらオルトを見つめていた。
「ユキ姉」
オルトは私を指さしていった。
「私は売り物じゃないぞ~」
私はオルトが渾身のボケをかましてきたと思いベットでゴロゴロしながら答える。
しかし、オルトは顔を赤くしながら真面目に話し出す。
「俺、ユキ姉が好きなんだ!!!」
「はへ?」
「俺の事ここまで強くしてくれたし、面倒も見てくれて……ユキ姉は強いし、かっこいいし、奇麗で可愛い所もあるし。とにかく好きなんだ!!」
「あ……うん。ありがと……」
私は少し毛布に包まり赤くなった顔を隠しながら答えた。
私は嬉しさも恥ずかしさもあり反応に困っていた。
この数年でオルトが私を女の子として意識してくれている事。
私もオルトは好きだし、出来ればずっと一緒にいたいと思っている。
最初は弟の様に思っていたけど、気づけば私の身長を追い抜いて顔も体つきもたくましくなって。
悔しい事に、私好みの男に成長しているし。
この心のモヤモヤを私も吐き出すべきなのか……
「ユキ姉は、俺の事どう思ってる?」
「わ、私は……オルトは弟子でもあって、家族でもあるし弟? でもあるしもちろん好きだよ……」
私は少し濁すように言ってしまった。
オルトはそんな私を見てベットに腰かけて私に急接近してきた。
「ユキ姉、俺は本気なんだ! 目を見てくれ」
「あぅ、私も……オルトが好きだ。」
私は何を言っているんだ! 年上のお姉さんだというのに!
いいように主導権をいつの間にか握られてしまっている。
破裂しそうな鼓動を抑えてる私にオルトが不意打ち気味にキスをした。
「んっ……」
私はオルトを受け入れてしまった。
あと数ヵ月しか寿命が無いのに、オルトの本気の気持ちに私の感情が抑えられなかったのだ。
二人の夢の様な数秒間のキスのあと見つめ合った。
「ユキ姉、俺……」
「うん……」
私はそのままオルトにベットに押し倒されてキスをする。
オルトの手が私の胸へ自然と伸び、優しく撫でてくる。
キスをしながら、私はオルトにあっという間に服を脱がされた。
「オルト、私……初めてだからその……優しく頼む」
「分かったよ」
私達はこの日から恋人になった。
恋人になっても意外にも二人の生活は変わらなかった。
この日常が私たちにとってとても心地の良い日々だったのだろう。
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