俺、ホラー映画に転移した模様。

ラミウス

第1章 ホラーへと続く軌道

第0話 プロローグ

俺は今、駅のホームのベンチに座って電車を待っている。これから1週間の出張に行くためだ。朝は会社に出社して、少し仕事をしてから駅にやってきた。だからスーツのままだ。出張先の宿泊はホテルだから、ホームに入る前に着替えてもよかったんだけど、面倒だった。


腕時計に目をやると時刻は10時くらいで、周りを見回しても電車を待ってる人は数人しかいない。近くに立って会話しているのは、大学生らしき5人組の男女グループ。遠くのベンチにはベビーカーを押さえているお母さん、そしてひとつ空けてスーツ姿のおじさんが座っている。

自分が座っているベンチには誰も座る気配がないから、隣にキャリーバッグを置いてある。中身はノートパソコンと着替えだ。


電車が来るまでもう少し時間があるから、暇つぶしにスマホを見る。でもすぐに飽きてしまった。スマホを仕舞い、遠くに見える空を見ながらぼーっとする。


「いい天気だなぁ。寝ちゃいそー」


ついつい声に出してしまった。すこし恥ずかしい。何もしてないと寝そうだから、大学生たちから聞こえてくる会話に耳を傾ける。


「やっぱり、海外のほうがよかったんじゃない?」


「そんな事ないさ。1週間いろんなところ見てまわろう」


「電車でブラリ旅もきっと楽しいよー」


「ブラリじゃなくて、じっくりプラン立てたんだから!」


「そうそう!」


男子3人に女子2人。楽しそうに話している。どうやら旅行に行くらしい。1週間、こっちは仕事でむこうは旅行。うらやましい・・・。


〈間もなく、2番線に電車が参ります・・・〉


そろそろ電車がくる。立ち上がって、ベンチに置いてあるキャリーバッグを下ろした。そして先に並んだ大学生たちの後ろに並ぶ。

やはりそういう時間帯なんだろう。電車から降りてくる人もまばららだった。


キャリーバッグを上の棚に入れ、ドアと隣接しているイスに腰掛けた。結局車両の中にいるのは俺と大学生グループだけだった。彼らは少し離れた向かい側に座っている。


ドアが閉まり、電車が発車した。電車の走る振動が心地良い。大学生グループも静かにしている。

ダメだ、眠くなる。下車するまで、時間があるから少し眠ろう・・・。

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