現像過程

デミ

1話

 とても長い映画を観ていた。その映画は白黒で、音もなく、フィルムも傷だらけだった。


 聴こえてくるのは、映写機がベルトを動かす音だけで、フィルムに写っている剥製はくせいの動物たちは、まるで生きているかのように、彼らは彼らの生活を営んでいるように見えた。


 しかし映写機を通して観た彼らは、決して動いてはみせなかった。フィルム上の彼らは生きていて、スクリーン上での彼らは死んでいた。フィルムについた傷が影となり、スクリーン上でうごめくのを僕は気にせず、ただ眺め続けた。

 やがてベルトの音もしなくなり、スクリーンも見えなくなる。私はその映画に夢中になっていた。

 そして無意識に映写機の方へ行き、フィルムテープを取りだし、フィルムを一枚一枚丁寧に切り分けた。


 気がついた時には全て切り終わっていて、私はその切り取られたフィルムを修復しようと何時間もかけ、ゆっくりと直していった。

 けれど元通りに直る訳もなく、映画は初めて観た時のものとはかけ離れていた。


 記憶というものは曖昧で信用ならないもの。だが二回目にそれを観た時、私は違和感なく見れてしまった。それは元からそうであったかようにそう思えた。


 そう。

 記憶が上書きされたのだ。



 そして私はまた切り分ける。

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