179.一方通行でも

4月12日(金)


大好きな周りの人達、上司、推し。


私が近づきたくて欲深くなるものほど基本的に私の一方通行な思いでいることが多い。友人にも彼女にも、会いたいとか寂しいとか本音はいつだって言えない。どんなにその日が楽しくて帰りたくないと思っても、向こうは決してそう思ってはいないのが分かるからだ。


上司もそうだ。こちらはどうにかして貴方のような頼れる人になりたいです、と思っていても向こうはめんどくさい使えない社員だとしか思っていない。


昔はもっと欲張りだった。自分の気持ちをぶつけることが多かった。でも言わなくなった。相手の声色や話した会話で何となく分かる。彼ら彼女らは私を求めてはいない。私の大切ものはいつだって私を1番には選ばない。


価値のない私など、そう思われることは分かっている。だったらこちらは相手が求める立場に大人しく収まっているのが吉だ。少しでも出しゃばるようなものなら関係なんてものはすぐに壊れる。壊れて落ち込むくらいなら平穏に、緩やかにいるほうがよっぽどマシだ。


それとは裏腹に自分があまり求めていないものほど、寄ってきたりする。


必要としていないものでも受け入れることは容易だ。それはあまりにも身勝手な行為だと分かってはいる。ただ払い除ける事はより精神をすり減らすことだから、どうしても受け入れざるを得ないのだ。


…いや、違う。自分が本当に欲しいものはいつだって手に入らないし、向こうからの思いは何も無い。だから自分が求めていなくとも、必要とされると自分に存在価値があるように思えてどこか心地いいのだ。


私ですら誰かしらには求められる存在なのか、と安心する。結局それは良くないことだと理解しているし、そのせいで後に問題に巻き込まれたりもする。でもそうなっても自分が迷惑するだけで済むのならそれで良いのだ。


他人にとって何となく都合のいい人で、でもそんな自分を変えようという気にはもうなれない。


誰かに理解されたくて、自分の1番愛するものに愛されたくて、仕方のなかった私は周りにとっては要らないものだった。自分が邪険に扱われたとて、大切にされなかったとて、それはあまりにも慣れている普通のことである。そんな中途半端ないいやつが私だ。

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