第20話オリエンテーリング3
私達は順調にチェックポイントを通過し山中で野営の準備をしていた。
広い山中に散らばったチェックポイントを通過する関係で、どうしても一日じゃ無理だし野営の練習も兼ねてるからね。
私一人なら一日で行って帰ってだってこれるけどこれはチーム戦、リーダーは大人数を指揮する訓練でもあるから、あんまり私が表立って目立つ気はない。
私達のグループは難易度の高いチェックポイントを回避し、ゴールに早くたどり着く作戦。
今日はチェックポイントを二つ回れたから、明日もう一つ通過して最短でゴールする予定だ。
高ポイントのチェックポイントは割と強い魔物が出たり、険しい道のりだったり、ゴールから離れていたりするから避けていく。
私一人ならなんとでもなるんだけど、今回はチーム戦だからね。
リーダーの私の我儘でみんなを危険に晒せないよ。
なんというホワイトチーム、福利厚生はないけどみんな頑張ってね。
危なくなったら私が守るから。
「キリカ様、テントの設営が終わりました」
「ありがとう。それじゃあ夕食にしましょうか、携帯食料じゃ味気ないからある程度手を加えたわ。それなりに美味しいと思うわよ」
男子のチームメンバーが報告にやってきた。
私達女子はおさんどん役だ。
携帯食料を学院から支給されてるけど、それだけじゃ栄養が偏る。
私が一走りして近くの川から魚を調達してきたのだ。
「……この料理キリカ様達が作ったんですか?」
「そうよ。なかなか美味しそうでしょ?」
並べられた料理を見た男子諸君がビックリした様子で聞いてきた。
失礼な! 私達が料理できないとでも思ったか!
「キリちゃんがこんなに料理が得意だなんてビックリですよね。なんでできるのかしら?」
「本当です。普通貴族令嬢は自分で料理なんてしないですから」
私の以外な特技にマリー達まで驚いてる。
貴族家には専属の料理人がいるから普通自分で作らないもんね。
だけど私には自分で作れる理由があるのだ。
「強くなるには栄養管理が必要なのです。家の料理は脂質が多くてタンパク質が少ないですから、あれではおデブになってしまいますわ。高タンパク低脂質は基本ですもの」
「キリちゃんは食事にこだわりがありますのね。てっきり脳筋かと思っていましたわ」
「マリー様、脳筋は失礼ですよ。筋肉バカの方があっているかと」
「……貴方達はぁああ……!?」
まだ置いて行ったことを根に持っているのか!
ふっふっふっ、こんなこともあろうかと魚料理を作ったのだ!
魚にはイライラに効くカルシウムとビタミンB12が多く含まれてるんだよ。
私の作った料理を食べて、優しいマリーとサラに戻っておくれ!
「ふふふっ、キリカ様って思っていたより親しみやすい方だったんですね」
「あら、それではシオリさんにはどう見えていたのですか?」
わちゃわちゃやっていると、シオリがおかしそうに話しかけてきた。
私が気になったことを尋ねるとシオリは「そうですねぇ……」と少し考えてから答える。
「キリカ様は高位の貴族令嬢ですから、もっとこう……貴方如き弱小国の貧乏貴族がこの私に気安く話しかけないでくれるかしら? とか言いそうなイメージでした」
「まあっ!? シオリさんったら冗談きついわね」
なんか昔マリーにも同じようなこと言われたなぁ。
外から見た私のイメージってこんななの?
これは早急にイメージ改革が必要だわ。
食事の後はすぐに休むんだけど山の夜は辺りに灯りもなく暗い、二名ずつ交代で見張りを立てて休んだ。
あらかじめ私が魚を取りに行く際、周囲の魔物を間引きしておいたこともあり、就寝中に魔物の襲撃にあうこともなく、みんなぐっすり眠れたようだ。
でも私はそれをみんなに伝えたりしない。
野営の訓練にはあまりならないけど、みんな歩き詰めで疲れてたからゆっくり休んで欲しかったんだ。
人知れず働くなんて私ってなんていいリーダーなんでしょうか、まさにリーダーの中のリーダー、リーダーの鑑!
さあ、今日でオリエンテーリングも終わりだ。
みんな、後ちょっとだから頑張って!
その後私達のグループは一着でゴールしたが、最短のチェックポイントしか回ってこなかった為に最終順位は二位になった。
ちなみに一位はガイアスのグループで、なんでももっとも難しいとされる強力な魔物の生息するポイントを突破してきたみたい。
なにそれ、自分のグループをリーダーのくせに危険に晒したのって思ったけど、魔物の生息域の手前で待機させて一人で討伐してきたみたい。
なんだよ個人プレイじゃん!
そんなんでいいなら私にだってできたわ!
ガイアスはワンマン社長だね。
いずれ下剋上にあってその座から引きずり落とされるがいいわ。
まあいいよ、私は楽しい遠足に参加したみたいな感覚だったし!
そこまで順位にこだわってなかったし!
悔しくなんてない、ないったらない。
ガイアスチームが一位なのはいいとして、問題は他のグループでおきていた。
ラファエルと同じグループになったエルカちゃんが、同じグループの女子にいじめられていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます