第4話 家出
私は、小さいころほど無駄に器用な子供でした。
田舎の言葉で、賢いことを「さがしい」と言うので、よく大人に会うたびに、
「こったら、さがしいわらし、おども、おがもええべな」
よく言われてました。
標準語に訳すと
「こんな賢い、お子さんで羨ましいわ」
「お父さんも、お母さんも、ほんと安心ですね」的になります。
ですが、両親は特に、親父が自分の子と思いづらい所があったようです。
ある日の日曜日。
どこかに朝早くから、車で出掛け家に戻り玄関で父親と口論になりました。
その後かなり頭にきており、話した内容は覚えていないのですが、父親から何かについて言われ、それに対して返答し、また何か言われ、それに言い返すことを数度繰り返した後親父から、
「おめぇ〜はうちのこでねぇ〜、出ていけ」
と言われ
「わかった、出ていく」
という、やりとりになりました。
当時4歳、保育園にいってたころです。
今は、だいぶ変わりましたが、当時は短気で納得できないことには、絶対に「はい、わかりました」と言うことが出来ない子供でした。
幼いなりに、家から出て目標は、「北海道に行こう」でした。
金銭感覚は、まだ芽生えていなかったからこそ決意できたんでしょうね。
駅まで行って、電車に乗って、フェリーに乗れば北海道という道順わかっていたので、まずは、駅だと意気揚々と出発しました。
家から駅までは、4kmないくらいです。
徒歩で行こうとは、今は思いませんが、まだバスに乗ったことがなく、親が運転する車以外の移動手段は徒歩しか知りませんでした。
経路は3通りは把握していたので、歩きながら、どの道がいいかなと考えながらむかいます。
親父が発端ですが、母親は探しにくるかも知れないなと思い、普段通る道の並行した1本裏の道や、車が入ってこれない公園の中、水路脇の遊歩道などを選んで歩いていきます。
何故かこの時、見つかったら負けだと思い込んでおりました。
この時の感覚で、駅までは最短で行くと2時間くらい、遠回りして3時間多分9時前に出てるから昼過ぎくらいには着くなと思ってました。
子どもの足には、なかなか辛い、遊んでる時には、いくらでも動けるのに、ただ歩くだけの辛いこと、それでも普段通らない道なので、変わったものを見つける度に気持ちは軽くなります。
それでも、喉は乾くし腹も減る。
水は公園があるし、愛想は良いので最悪、誰か声掛ければ水は飲ませてくれるでしょ。飯はどうしよう?
ばあちゃんの倉庫に行こう。
何か貰えるか、ばあちゃん居なくても近くに駄菓子屋さんがあるから、何か買おう。
駅までは、だいぶ遠回りになりますが、まあしょうがない。
やっとのこと倉庫に着きました。
シャッターは閉まっており、玄関も鍵がかかっています。
入口の蛇口から、水は出るので喉を潤します。
駄菓子屋さん行くか、日曜日ですが、開いてました。日曜日は、お店がお休みの感覚も持ってませんでした。危ういですね。
所持金数百円、何でか持ってました。うまい棒、ベビースターラーメンだったかな何故か喉が乾く系を何個か買い倉庫に戻ります。
表に子供一人は目立つなと、倉庫の裏、ブロック塀に登って食べてました。
車が1台入ってきました。
のぞくと、母親でした。親父の車だったので、親父もいっしょか?
車から降り、正面の方を行ったり来たり、車に戻り出て行きました。
(すぐ出ると、鉢合わせしそうだな)
少し時間を潰してから、出発します。
ここからは、しばらく見通しの良い道が続くので、普段通る道から、2本から3本ズレた道を選び線路沿いに向かいました。
まともなものが食べたくて、駅の側のばあちゃんの家に寄ってから、駅に行こうと考えました。
今思えば、バカですね。
探してる親がいるんだから、ばあちゃん家寄ったら間違いなく拘束されますよね。
線路沿いに進み、踏切がなかったので、よく通ってた陸橋に向かいます。
唯一いつも通ってた道にでます。
ただ、下からずっと歩くと目立つので、線路際の階段に向かいました。
階段を上がり、気合を入れ直します。
(ダッシュで乗り切る)
階段の残り2、3段からダッシュして反対側の階段を目指します。
残り3、4m、やった渡れる。
体が、ふわりと持ち上げられます。
真横から親父に持ち上げられました。
やっぱ、ここが鬼門だった。
4歳の冒険終了。
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