【コメディ】わしはサンタクロース
クリスマスの夜。
森口巡査が見回りをしていたところ、民家の塀をよじ登ろうとしている怪しい老人を見つけた。
「ちょっとおじいちゃん。あんた、この家の人?」
「わしはサンタクロースじゃ」
「………」
森口は老人を交番まで引っ張っていった。
老人は文句を言った。
「一体何なんだ。わしは忙しいんじゃ。用があるならとっとと済ませてくれ」
「あんた、あの家で何しようとしてたの?」
「そんなこと聞くまでも無かろう。さっきも言うたがわしはサンタクロースじゃ。あの家の子供にプレゼントを渡そうとしていたんだ」
「サンタクロースねえ……」
森口は老人を見た。
老人はサンタクロースというより貧乏神と呼んだ方がしっくりきそうな姿をしていた。
所持していたズタ袋も調べたが、中身は空で何も入っていなかった。
どう考えても空き巣か何かが目的だったとしか思えない。
「本当のこと言ってくれなきゃずっとここにいて貰わないといけなくなるんだけど」
すると老人は怒りだした。
「それは困る。今晩中にこの国の子供たち全員にプレゼントを配らんといかんのじゃ。正直に話しているのに信じないのは貴様のほうじゃろう!」
「だってあんたのその格好、どう見たってサンタクロースじゃないじゃないか」
「そう見えるのはお前の信心が足らんからじゃ。人のせいにするな」
……埒が明かない。
森口はうんざりして言った。
「信心とかどうでもいいからさ。早く本当の事を言ってくれよ。大体ねえ……って、あれ?」
森口がほんの数秒目を離した間に老人の姿は無くなっていた。
老人が座っていたはずの椅子にはクリスマスカードが一枚置かれていた。
森口は慌てて周辺を探して回ったが老人の姿はどこにも見つからなかった。
あの老人は一体何者だったのだろう。
本当にサンタクロースだった……なんてことはさすがに無いだろう。多分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます