【SF】れんらくもー

 インターホンが鳴ったのでモニターを確認すると、牛が一頭映っていた。

 もー、と鳴いている。

 私はコンロの火を止め、玄関を開けた。

「ご苦労様」

 牛にそう声を掛けると、牛は口をモシャモシャさせたあと、ベェっとヨダレまみれの紙を吐き出した。

 どうやら小学校の行事の変更連絡らしい。

 私が内容を確認したことを見届けると、牛は紙を再び呑み込み、のしのしを去っていった。



 個人情報保護の厳密化の声が高まった結果、「個人宅への配達・連絡には動物を使用すること」という法律が制定された。

 人間やコンピュータに任せるよりも言葉を理解しない動物のほうが悪用の可能性が格段に下がるから、とかいう理由らしい。

 結果、窓から外を見れば道路を様々な動物たちが闊歩している。


 届くのは遅くなったし、そもそも届かないこともあるし、路上はそこかしこ動物たちのフンだらけ。

 面倒ごとが増えただけにしか感じないが、海外からは絶賛されているらしいので多分良いことなのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る