【ラブコメ】ほれ薬2

※前話『【ラブコメ】ほれ薬』の続きのお話です。

※と言っても前話未読でも問題ない内容になっています。




 学校の化学室で、京介は手にしたビーカーを見つめていた。

 ビーカーの中には虹色に光る謎の液体が入っている。


 どうやらほれ薬らしい。


 凄い色と匂いだが、本当に効くんだろうか。

 本来ならこんな怪しいものは置いてさっさと化学室を立ち去るべきなのだが、京介は迷っていた。

 実を言うと、クラスに気になる子がいるのだ。


 ひょっとして、これを使えば……。


 そんな考えが思い浮かび、慌てて首を振る。

 こんな見るからに体にやばそうなものあの子に飲ませるわけにはいかない。

 そんなことするくらいなら自分で飲むべきだろう。

『いやー、悪い悪い。ほれ薬を飲んだせいであんなことしちゃったんだ』

 そんな感じで後から言い訳ができると思えば告白する覚悟も決められるかもしれない。


 しかしこれを飲むのか……?


 京介が悩んでいると、背後から声がした。

「あ、京介君ここにいたんだ。先生が探してたよ」

 ハッとして振り返ると、化学室を覗いていたのは同じクラスの桃子。

 どちらかと言えば地味で目立たない、大人しい子だ。

 そして、京介が気になっている相手である。

 京介は慌ててビーカーを置きながら言った。

「ありがとう、すぐ行くよ」

 だが、桃子は不思議そうな顔でビーカーを見た。

「なにそれ?」

「これ? あ、いやその、ほれ薬らしいんだ」

「ほれ薬?」

「本当かどうかはわからないけどね。さあ、さっさと行こう」

 そう言って京介は化学室から出て歩き出したが、ふと気づくと桃子がいない。

 慌てて化学室に戻ってみると、桃子がほれ薬のビーカーに口を付けていた。

「何してんの!?」

 京介が驚いて声を掛けるが、桃子はそのまま一気にほれ薬を飲み干した。

 ビーカーを置き、顔を真っ赤にしながら京介を真っ直ぐ見る。

「好きです。付き合って下さい」


 一瞬の沈黙。


「……はい」

 京介は頷いた。


 桃子は京介がどうするか迷っていたことをあっさりやってのけてしまった。

 大人しい子、という京介の印象はどうやら間違っていたらしい。

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