【SF】白線から落ちたら死ぬ世界
異常気象の影響でアスファルトの道路が底なし沼に変わってしまった。
原理はよくわからない。道路に使われるアスファルトが液体になったところで十数センチくらいしか深くないだろと思うのだが、実際落ちてみるとめっちゃ深いのだから仕方ない。とにかく今まで公道として使っていた道がことごとく沼と化したのである。
だが、沼だらけになってしまったからといっても学校や会社に行かない訳にはいかない。
そんなわけで、世間は大混乱に陥った。
底なし沼に落ちずに外出する方法は、道路に引かれた白線を踏んで移動すること。
これまたどういう原理かはわからないのだが、白線の部分は何故か底なし沼になっていないのだ。
だが、それなら白線の上を歩けばそれで解決なのかというと、そんな簡単な問題ではなかった。
引かれている白線はそもそも細いし、整備の悪いところは途切れていたりするし、そもそも白線が元から引かれていない道路もある。
そして、自動車や自転車が使えないから歩行者の数は平時の数倍、地域によっては数十倍以上。
どの道路でも白線の上は常に長蛇の列ができていた。
そんな状態だから全国各地、あらゆる場所で罵声や悲鳴の嵐が起きていた。
「早く行けよ! 遅刻しちまうだろうが!」
「押さないでよ! 落ちちゃう!」
「用事がない人は出歩かないでくれ!」
「なんで会社休みにならないんだよ!!!」
さながら古典の蜘蛛の糸の一幕のようである。
この異常な事態に目を付けたとあるメーカーが、ドローン技術を応用した個人用の空中移動装置を開発した。
白線の上を歩く必要がなくなるということで商品は大ヒット。
他のメーカーも追従し、空中移動装置はあっという間に一人が一台以上持つのが普通と言われるまでに普及した。
最初の頃は燃費が悪かったり空中で故障したり装置を使用した人間同士の接触事故が発生したりと様々な問題が起きたが、空を移動する快適さを覚えてしまった人々はもはやそれを手放すことなど考えられなかった。
規制を求める声などはほとんど上がらず、代わりに安全性や機能性をもっと向上させろとメーカー各社の尻を叩いた。
そんなわけで、今では人類が空を飛ぶのは普通の光景になっている。
根本の原因となった異常気象に関しては何も解決していないが、その辺はまあ後で考えたらいいだろう。
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