【ジャンル不明】信じるなら最後まで
大きく開いた崖の前に、男が立っていた。
男は岩に立て掛けてあった数枚の板から一枚選んで手に取った。水平に持ち上げ、手を離す。 すると、板はそのままふわりと宙に静止した。
男はその板に乗り、船を漕ぐように手を動かした。
板は水面を進むように滑り、崖の向こう岸へ辿り着く。
男は板から降りると板を手に取って岩に立て掛け、恭しく頭を下げてからその場を立ち去った。
男が去った後、近くの茂みから別の男が顔を見せた。
男は先程の男の様子をずっと窺っていた。
先程の男がやったように、見様見真似で板を水平にして離す。
すると板はやはりふわりと浮いた。
男は恐る恐るそれに乗った。板は想像以上にしっかりしていて、男が乗っても全く沈まない。まるで見えない土台に固定されているかのようだった。
それから試しに手で空を漕いでみると板が向こう岸へ滑り出した。
進みは順調で、男を乗せた板はあっという間に谷間の中間付近まで進んだ。
だがその時、男はどうしてこんな板が浮いているのか、本当にこんなもので向こうへ辿り着けるのか、という疑念を持ってしまった。
途端に板は浮力を失った。
支えを失った男は叫び声とともに谷底へ落ちて行った。
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