【ホラー】招く猫

 ある晴れた日。私は所用のためバス停でバスを待っていた。


 ニャー。


「あら」

 いつの間にやって来たのか、足元に小柄な白い猫がいた。毛並みがとても綺麗で、顔もなかなかの美人さんだ。

 猫は私から離れたが、ついて来いと言うように振り返って何度か鳴いた。

 一体何かしら。

 時計に目をやる。次のバスまではまだしばらく余裕があった。

 すぐに戻れば問題ないかな。

 私は猫に向けてニコリと笑い、その後についていった。


 猫はトコトコ歩きながら、たまにこちらを確認する。

 その可愛らしい姿に、私は微笑みながら後を歩いていた。

 だが、あるマンションの傍を通りかかったときのことだった。

 猫が突然駆け出した。

「あ、待って」

と、慌てて追いかけようとしたのだが――。

 上から降って来た何かが一瞬視界を遮り、足元で砕け散った。

「え?」

 慌てて足元に目をやると、陶器の破片と真っ黒な土が散らばっている。

 これは……植木鉢?

 私は頭が真っ白になりその場で固まった。

 と――後方で凄い音がした。

 驚いて振り返ると、バス停近くの建物に追突した車が黒煙を上げていた。

 そこは、ついさっきまで私が立っていた場所だった。

 あのままあそこに立っていたら、今頃……。

 私は茫然として猫を見た。

 猫はじっと私を見つめた後、背を向けてどこかへ行ってしまった。


 あの子は私を助けてくれたんだろうか。

 それとも……。

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