暇つぶしショートショート集

鈴木空論

【SF】なまけ者の電卓

 算数が苦手だった僕にお父さんは変な電卓をくれた。

 いつもは普通の電卓だけど、たまに入力しても答えをちゃんと表示せず、

「それくらい自分で解け」

「こんなのもわからないの?」

なんて言葉を返してくる。しかも急いで答えが知りたい時に限って。

 僕はお父さんに文句を言ったが、お父さんはこの電卓以外使わせてくれなかった


 僕は電卓を使わず自分で計算するようになった。

 計算は大嫌いだったけど電卓に馬鹿にされるよりましだった。

 最初は時間がかかるし間違えるし、嫌で嫌で仕方なかった。

 でも諦めず頑張っていたら少しずつ解けるようになり、楽しくなってきた。


 大人になった僕は数学者として研究所で働いている。

 このあいだ結婚もした。

 子供が生まれたらこの電卓をあげよう、なんてことを考えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る