第7話 みんなでクエスト
俺たちが受けたクエストは、とあるものを探すクエストであった。
≪秘密結社アンダーログの開発しているという、不死の薬に関するデータが入ったUSBメモリが、確かにここら辺にあるはずなんだ。日が昇れば、きっと証拠を消されちまう!だから頼む。日が昇るまでに探し出してくれ!≫
だいぶ無理やりな設定をNPCがつらつらと述べる。
「あーおい、アブゾル。このクエスト、大人数向けじゃないか?」
「そうだぞ。だが賞金が多かったからな。」
アブゾルさん、後先何にも考えてないよこの人。
「馬鹿かお前は!」
Itachさんがキレた。
≪え、ここら一帯探すんですか?≫
chaosさんがチャットでそう呟く。
「そうだぞ。言っておくが、このゲームかなり作り込まれてるから、隅々まで探さないと見つからんよ」
≪このクエスト推奨人数30人だぞ!何考えてんだオッサン!≫
俺は思わずつっこんでしまった。
「まあまあ落ち着きなされ。無理だったら無理だった、ってことで適当にヤクザ討伐でもすればいいっしょ。」
軽いノリで答えたのはショタアバターのSWZさん。
「いや、そうはいってもねー時間無駄じゃんかー」
男声女アバターのAkiさんは、鼻をほじりながらぼやいた。頼むからその外見でそれはやめてくれ。
≪とりあえず探しません...?≫
「「「「「≪せやな≫」」」」」
探すことにした。
______
ないなー。路地裏、NPCの家の庭、犬小屋、ポスト、土管の中、道の溝、排水溝の中。あらゆる場所を探したが見つからなかった。
「リーダーないよー」
「お前が持ってきたクエストだろうが!さっさと探せ!」
今のところ収穫は、Abuzoruさんが結構やばい人というのが分かった、ということだけである。
俺はなんとなく路地裏に入り、すぐそこにあったゴミ箱を開けてみた。
やっぱないなー...ん?
ゴミ箱の中に、光り輝く玉を見つけた。
何だこれ。
≪HAGANEさーん、なんかあったー≫
「おーい、クロスケさんがなんか見つけたみたいだぞー」
一旦みんな集合した。
「何これ?」
「とりあえずカバン入れてみてよ。」
AkiさんとSWZさんに言われた通り、自身の容量無限のバッグにその球を入れた。このバッグに入れると、アイテム名が表示されるので、それがどういう名前のアイテムかわかる。
ん...?これは...
≪ステータスポイント(5)だって≫
「「「「「マジかよ!」」」」」
chaosさん以外がめちゃめちゃ食いついてきた。
≪それって何ですか?≫
何それ、みたいな顔をしたchaosさんが問う。
これは俺でも知っている。そう、これは...
「知らないのかよ!これは自分のステータスを上げることができる激レアアイテムだぞ!しかもこれ5ポイントあるじゃんか!」
そう。これは自身のステータスを上げることができる究極アイテムだ。しかも効果は半永久的。一度使っても、違う能力を上げたかったら、上げた能力を戻してまた使える優れものだ。
「一度に5ポイントまでが限界だが、、あるのとないのとでは近接戦にかなり影響出るからな。」
Itachさんが説明してくれた。接近戦には影響が出るが、銃器を使った遠距離戦ではあまり効果がない。このゲームは、基本的に技術がモノをいう。いくらステータスを上げたところで、遠距離から不意打ちされたら対処不可能だし、戦車には勝てない。とてもバランスの取れた仕組みだろう。
「まあ、見つけたのはクロスケさんだし、自分で使ってくれ。」
≪ではお言葉に甘えて≫
俺は俊敏性に全振りした。俊敏性は5と初期の中では最高値であったが、さらに3プラスされて8になった。俊敏性はあるのとないのではかなり違うからな。
「俊敏極振りか。男前だな。」
Akiさんがイケボでつぶやいた。もっと今の自分の見た目を考えてくれ。
≪水差して申し訳ない。早く探そう≫
「えー、俺もステータス上げたいー」
Abuzoru。お前もう黙ってくれ。
______
なんとかchaosさんが川に流されている謎の箱を発見し、その中にUSBが入っていたことで、ミッションはクリアされた。
「てか川に流れてるとか誰もわからないだろ。」
「アブゾル。お前が持ってきたんだからな。」
HAGANEさんが呆れたようにつっこむ。
今回の報酬は多かった。一人20,000マネーである。
「マンション買いましょ!」
ショタボでショタアバターのSWZさんは、欲しいおもちゃを見つけた時の子供のようにHAGANEさんにキラキラした目を向けた。
≪どんな拠点にするの?≫
俺がHAGANEさんに聞く。
「いやー正直迷ってて。みんなはどんな感じの拠点がいい?武器庫が広い地下とか、眺めがきれいな高層マンションとか。」
「「≪地下≫」」
「「≪高層≫」」
きれいに真っ二つに割れた。ちなみに、Itachさん、Abuzoruさん、俺が地下。SWZさん、Akiさん、chaosさんが高層である。
Itachさんはアブゾルさんと同じ意見なのが嫌なのか、「うげー」といった顔をしている。
「高層でしょ。ゲームくらい、きれいな景色見させてくれよ。」
Akiさんが一歩前に出てそう言った。
「景色?ハッ!冗談言うなって。この世界は機能性が重要。武器庫が広いほうが後々楽だ。」
ItachさんはAkiさんの意見を鼻で笑ってそう言った。
「そうそう。機能性重視。大切なのは見た目より中身。」
Abuzoruが言う。この人が言うと説得力ない。
「じゃあ何ですか?俺たちにじめじめした、くっさい地下で生活しろと?それはもう住居じゃない。俺たちが今求めているのは何?拠点だ。くつろげない拠点なんてそれは拠点じゃないね。」
SWZさんがわかったか、とばかりに意見を述べる。
≪あほらし。やっぱどっちでもいいや。≫
≪僕も...≫
俺とchaosさんは呆れていた。
「...なあお前ら。じゃあこういうのはどうだ。」
そのあと、HAGANEさんが素晴らしい意見を提案した。
結局俺たちは、HAGANEさんの『一軒家』という意見に賛成した。
______
【速報】バッドコミュニティにハマグチ参戦
78.名無しさん
【悲報】ハマグチ親衛隊その4もう満席
79.名無しさん
≫78
マジで?誰か5作った?
80.名無しスリーパー瞳
なあおまいら。そこらのWeRober囲うの楽しいか?自分の組織創ったほうが楽しいぞ。
81.名無しさん
≫79
作ってる。てかもう7まで作られてたはず
82.名無しさん
≫81
きもすぎワロチ
83.えろり
≫80
それな。ハマグチ囲うより友達と組織創ってやったほうが絶対楽しい。あっ。そっか、おまいら友達いないもんな...
84.名無しさん
≫83
と言っているお前も実は友達いないんだよね...
85.名無しさん
≫83
友達(二次元)
86.名無しさん
ハマグチがステータスポイントの全5ポイント瞬発力に振ってて草
87.名無しさん
男の極振りwwwwwwww
88.名無しさん
ステータスポイントってどこにあるん?まじで探してるが見つからん
89.名無しスリーパー瞳
≫88
ワイらの組織メンバー18人で捜索したが1ポイントも見つからん
90.名無しさん
キルリーパーとハマグチは5ポイント見つけてる
91.名無しビンゴ
これホントにあるの?俺一日中探してたけど謎のトランプカードしか見つからん
92.名無しさん
≫91
それクッソレアアイテムだぞ!くれ!
93.名無しさん
≫92
ずるいぞ!俺にもくれ
94.名無しビンゴ
≫92
マジ?ネットで検索したが情報がないからわからん
95.名無しさん
≫94
ここがネットの最新情報や。用途わからんなら寄越せ
96.えろり
≫91
それただのトランプだぞ
97.名無しさん
【最高】ブラックエンジェル、ハマグチ親衛隊その1にリンチされてる
98.名無しさん
≫97
ざwwwwざまあwwwwwwwwwwww
99.名無しさん
≫97
やったぜwwwwwwwwwwwwwww
100.名無しサンタ
≫97
ざまあああああああああああwwwwwwwwwwwww
101.名無しスリーパー瞳
≫97
え、まって、俺の組織も今日ハマグチ親衛隊その1にめっちゃ殺されて物資取られたんだけど...
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