ジュウバンと話す。

れなれな(水木レナ)

第1話 よう、親友!

 わたくしのターンから始まるわけだが、よろしく親友。


「こちらこそ」


 いつもいつも、すまないな。


「どうせなら、いつもいつも言ってよ」


 そうだな、あんまり接触しなさすぎだよな。


「うん」


 ジュウバンの対応のおかげで、友だち無くさずにすんでるよ。


「うん」


 そのへん、感謝してる。


「あんたからの感謝はいつでもカモンッ」


 ジュウバンからのその言葉は、いつでも名誉に感じる。


「えぇ?」


 顔にやけてんぞ。


「だって……」


「鬼じゃないんだから、取って食いやしないよ」


 そんなこと思ってないが。


「それがいい。楽にして」


 ジュウバンとはお茶飲み友達という感じになりそうだな。


「ははっ」


 楽しいよ。


「オーケー、オーケー。何話そっか?」


 親友たちの話は、まだ重たいかな?


「あー、そういうわけね」


 どういうわけでもない、今思いついた。


「本心から?」


 ジュウバンが親友枠なので、それしかないと思って。


「あー、すごい直球w」


 一番お気に入りの親友ってだれよ。


「おまえだよ」


 ええ? にやけるなあ。


「うそ!」


 なんだよ、うそかよ。


「おまえみたいなやつ、冗談じゃないよ」


 しょぼん、きついけど、ジュウバンが言うなら本当なんだろうな。


「セリフ、セリフ」


 あ? なにこれ、芝居? 芝居なの?


「そー」


 参ったな、こういうの苦手。


「慣れると楽しいから」


 ジュウバン~~。


「実際、楽しいから」


 このやろ~~、試してんじゃねーぞ。


「うまいうまい。ロールプレイングしよ」


 ロールプレイング大好き!


「ほんとに」


 いろいろ遊べるの楽しいよな。


「うん」


 設定はどうする?


「おまえの観察力を活かして、寝ぼけた顔のお父さんを演じよう」


 えぇ? お父さん嫌いだもん。


「そう言わずに」


 かわいそうになるよな、歳を食うまでなんもおもしろいことしないでさ、蕎麦屋を開いたとたん、震災でさ。


「なーんだ、お父さんの事、好きなんじゃん」


 そのくらいの情はあるってことだ。


「ああ、いい、いい。昔話をしようよ」


 むかし話って?


「嫌いなやつとかの話」


 あ、セクハラ講師だな。


「そうそう、そういうお話するの」


 あれはさ、フェミニストの皮をかぶった何かだよね。


「なに?w」


 男女同権だからって女性が男性の真似をしなきゃいけない理由ってある?


「ないない」


 おまえら女も武器持って戦場へ行けとか……おかしいじゃん? 本当の女の戦いは、むしろ武器を持って戦場へいくことじゃないんじゃないの? 平和的に暮らしていくのに必要なことなんじゃないのって。


「ああ、うん。同じこと考えてた」


 そりゃまあ、同じ脳を使ってるんだから。


「同じ領域を使ってるわけじゃないよ」


 あれっ。


「チクサクコール」


 なんだそれ。


「な? あんたとわたしは実は、別」


 ほお……。


「食べ物の趣味だって違うしさ」


 そうなんだ。


「それそれ、それはそうだよ。あんたは自分の好みを知らない。わたしはカップスープ薄めて飲むの好き」


 あ、幼児時代のわたくし?


「そうだよー」


 懐かしいな! どうしてた?


「おまえの中で、豊かな暮らしになったなって眠ってた」


 おす。


「豊かさによって育まれた他のやつらと比べられんのヤだったの」


 ふうん。


「でも、みごとに時代は変わって、なんだか貧しくなったねw」


 わたくし、ジュウバンがいたからこそ、今の時代に対応できてる感じする。


「そうだろ? おまえ、もっと感謝しろよw」


 してるしてる。


「感謝しろよ、感謝」


 ありがとうございます。


「うぬうぬ」


 今度カップスープを薄めて飲もう? クリープをなめよう。


「あ、それいいね!w」


 さすがに粉ミルクは買えないけど。


「まあ。ひたすら演技だけど」


 あの頃は、普通のふりするのに一生懸命だったよなあ。


「そうそう、今だって役に立ってるでしょ。他のやつらじゃなくって、オレのとこ来たのも、そういうことでしょ」


 まあね。


「w。大丈夫、大丈夫だよ。黙ってればわかんないから。困ったことがあったら言って」


 本当、助かる! いつもごめんね。


「いいって! おそらく、多重人格は治らないよ。でもわたしがいるから、統合しなくても大丈夫」


 頼りになるよ!!!


「まあまあ」


 オレ、おまえのこと、大好き!


「オレも!」


 ナイスミーティングユー! 親友!!!


「ごめんなさい、いつも親友じゃない」


 どういうこと?


「いつもいつも、あんたの味方じゃないっていうこと」


 たとえば?


「野球なんか見たくないし、相撲も見方わかんないし、ドリフスターズ観てたいし」


 ひょうきん族ね。


「タモさんも、所さんも、明石家さんまも大好き」


 おなじおなじ!


「さっぶいでしょ?」


 いやだから、おなじだって。


「え? お笑い好き?」


 うん。


「今でも?」


 好きよ。


「同じかあ。やっぱ同じならいい。つきあってやるよ」


 おっともだち~~


「うんうん」


 明石家さんまさんの「ダメダメ」が好きでw


「うん」


 思えば高校時代の友達が同じイントネーションで「ダメダメ」って言ってたな。


「うん」


 あれはおもしろかった。


「うんうん」


 ちょっと言ってみたくなるような、リズムのよさとか。


「うん」


 でも、あの頃は部活ばっかりでテレビを観なかったなあ。


「なーんだ。くりぃむしちゅーとか」


 中田さんね?


「ちがうちがう」


 あれ?


「武勇伝! 武勇伝! でんでんででんでん♪」


 聞いたことあるわ。


「そうだろ?」


 中田さんは、放送大学をYouTubeで発信してらして。


「そうだろ?」


 あれはおもしろい。


 なんでだまるの?


「時間ないよ。病院」


 あ、入浴しておくか。


「そうだそうだ」


 じゃあ、またくるねー。


「あーい」

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