こっそり改稿
八木寅
第1話
彼はマクラの下に日記をいれてでかけた。
仕事に行く前にこっそり日記を書く。それが彼の日課。
仕事から帰ってくる前にこっそり日記を書きかえる。それが私の日課。
「……ギルドにはいったオレは、指示を受けて辺境の村を荒らす魔物を退治した。」
今日の日記にはこんなことが書かれている。
私は机に放置された、ネコマンガを眺めて思う。もし、魔物がかわいいネコだったとしても、コイツは退治できるのかと。
「指示を受けて辺境の村を荒らす魔物退治へと赴いた。しかし、荒らされていた原因は、ネコのいたずらだった。村人から疎まれるネコがかわいそうになり、連れて帰った。」
これでよし。と、私は毛むくじゃらの黒い手で、日記を元に戻した。
そして、彼の匂いがのこるマクラの上で丸くなり、昼寝を開始する。
***
オレはマクラの下からこわごわノートを取りだし、開いた。
やはり。今日も書きかえられていた。
幽霊でもこの部屋にいるのだろうか。
不安になりながらワンルームを見渡すと、黒猫がしっぽをふってかわいい目で見つめてきた。
「幽霊がいても、おまえがいるからこわくないな」
体をすりよせてきた黒猫をだきあげ、もう一度ノートをしっかり読む。
こわがらずによく見れば、内容がおもしろい。自分のこりかたまった思考が、やわらかくなっていき、新しいアイデアが浮かんでくる。
このまま書きかえてもらえば、小説の創作活動もはかどりそうだ。
明日はどんな物語になるのだろう。
改稿してくる見えない手に期待しながら、ノドをならす黒猫をなでた。
こっそり改稿 八木寅 @mg15
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