おじいちゃんの日記風小説みたいな

@mia

第1話

 大叔父は人当たりがいいというか、相手の懐に入るのがうまく、それを使って商売を成功させ裕福だった。

 お金があったからか大叔父の周りには入れ代わり立ち代わり人がいた。


 祖父は早くに亡くなっていたので、僕は大叔父をおじいちゃんと呼び懐いていたし大叔父いや、おじいちゃんも親戚に中で一番僕を可愛がってくれた。ずっと独身なので自分の子や孫の分も可愛がってくれたのかもしれない。


 だから、おじいちゃんの変な趣味を知っているのは僕だけだろう。

 おじいちゃんの家の僕だけが入るのを許された部屋は、一見普通の書斎に見える。

 でも、置いてあるものが……。

 机があってテーブルランプがあって椅子があって本が詰まった本棚があって壁には絵が何枚か飾ってある。

 本は猟奇殺人や連続殺人などの実際の起きた犯罪の物だ。

 誰でも知っているであろう切り裂きジャックを始め、いろいろと揃っている。日本語以外の本も多数ある。

 飾ってある絵は、有名な犯人直筆だとおじいちゃんに聞いたことがある。

 テーブルランプは、店に売っている物のはずだ。誰かの手作りじゃないはず……。

 幼い頃からこの家に遊びに来る度に、怖いもの見たさでこの部屋に入り浸っていた。社会人になってもたまに来る。

 

 おじいちゃんから終活するので手伝ってほしいと連絡があったので、休みの日に行った。

 片付けの途中に、封筒に入った紙の束を見つけた。

 パラパラ見ていると日記のようだった。

 日にちは飛んでいるし、書いてある一日の文章量も差がある。

 最初は、昭和の日付だった。

 両親に体罰を受けていることが書かれている。それが何年も続いて書かれていた。

 そして、高校生になったとき父親が酒をたらふく飲み浴槽で死んだと書かれていた。

 そのまま受け取れば事故死だけど、高校生コイツが殺したと直感した。

 読み進めると、他にもやっている。

 家出少女を自分の車に乗せ、所有している山荘に連れていき殺した。

 山菜を採りに来た人を。

 おそらく五人は殺している。


「おじいちゃん、これ何、誰が書いたの?」


「友人か誰かがくれた犯罪者の日記。そのように書いた小説かもしれないが」


 小説、小説か。

 確かにそれっぽい。

 でも、ふと思い出したことを聞いてみる。


「おじいちゃんは昔、別荘持ってたんでしょ?」


「だいぶ昔だよ」


 おじいちゃんは笑って答える。本当にうれしそうな顔。

 おじいちゃんが犯罪に巻き込まれ被害者になった話は聞いたことがある。

 仕事関係で詐欺にあったり、社員にお金盗まれたり。友人に借金踏み倒されたり。

 でも、加害者になった話はない。

 あれ、もしかして借金踏み倒した友人って、四人目の犠牲者だったりする?


 昔は、ドライブレコーダー付けている車はわずかだったし、防犯カメラもほとんどなかったらしいし。

 おじいちゃんが捕まらなかったのは、その時代だったから。

 僕も笑う。

 今この時代に五人捕まっていない自分の優秀さに。 

 

 

 

 

 

 


 

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