とある姫様の侍女と相談相手の持ちモノ

さつき

第1話


この物語は、とある姫様の侍女と

侍女の相談相手?!となった

じれったい不器用な2人の物語です。

***

とある国の姫様に質問されました。

「殿方のモノをいれたら、

末永く仲良くなれるらしいの?

おりんならわかると思ったんだけど……。

ねぇ殿方の持ち物で、何を入れるのかしら?」

おりんは考えた。

殿方のモノ?持ち物?何を入れるのかしら?


    *****


私の名は今は"りん"。

私がお世話になっている姫様には

"おりん"と呼ばれております。

姫様との出逢う前の話になりますが

私が生まれた国は不明ですが

かなり小さな頃、山で私は死の一歩手前。

つまり死にかけていたらしく私を

とある親切なお方に拾われました。

身体のあちこちに傷があり

その手当もされ、肩から背中の刀傷以外は

ほぼ治りました。

そして、お館様と呼ばれるそのお方に

8歳頃まで村で育てられました。

その村では、才能あるものは

年齢性別に関係なくお館様から

仕事をいただき働きに応じて褒賞を得る。

男女ともに15歳で大人の場所で

子どもでもお館様に認められれば

一人前として大人扱いされるのだった。

村の中以外の仕事をも受け持ち、

それに応じて、育てていただいた

お館様に恩返しできるという

(平凡な私でも)とてもわかりやすい

仕組みになっています。


8歳になった寒い日、お館様に呼ばれました。

期待に満ちた目で見ていた私は

今から思えば、興奮していたんだと思った。

「みく、お前はお茶を入れたり料理も

人並みに出来る。それを見込んでだが……。」

お館様は考えながらゆっくり話してくれた。

「今から言う場所に、知り合いの者が

茶店を開いてるんだが、そこの旦那が

足を痛めた所に、不幸が重なり

店の仕入れ中に亡くなったそうだ。」

「まあ、それはそれは、大変ですね。」

「そうだ。子もいない夫婦でな……。」

「お館様、私がそこに行って

お店を手伝えば、お館様のお役に立ちますか?」

いけないとは思いながらも、みくは

お館様の言葉をさえぎってしまった。

焦っていたみくはお世話になっている

大好きなお館様のお役に立ちたい、そして

育ててくれた恩を返したいと強く思っていた。


「ああ、役に立つだろうし、そのお店の者も

ずいぶん助かるだろう。みく……。

悪いが行ってくれるか?」

「はい。直ぐに準備します。」

「みく。いつも言っているが、ちょっとは

落ち着くんだ。悪い癖を出すな。

まだ冬で雪解けもまだだ。人の話は

最後まで聞くんだ。」

あっ。お館様のいつもの長いお説教が

始まってしまう。

みくはヤバいと思っていた。

お館様の怒鳴りもせず、あまり表情にでず

淡々と喋る口調に、みくは何度か

居眠りをしてしまい、お館様に

更に怒られるという特技?があった。


この体制きついよぉ~。

お館様早く話してぇ~。

お館様の声、あぁ~イイ声だわぁ~。

体制はきついけど眠たくなるぅぅ~。

みくは片膝を立てる体制のまま

一瞬眠りかけてしまったのだ。


「ちゃんと人の話を聞いてるのか?」

ギロッとお館様の目が鋭くなった。

「半人前以下のお前に仕事を

任せるのはかなり不安だからな……。

"雪解け"のあと"そこに行け。

道中は、そうだな……。」

「あっ、小助(こすけ)!!」

「こら、みく。ダメだろう。今

お館様が"バカみく"に大切なお話を

して下さってるんだ。ちゃんと聞けよなぁ!

お館様、お呼びに参じました。」

「はぁ~あぁ…2人とも似たり寄ったりだな。

この私としたことが育て方間違えたのか?

はあ~。2人に命ずる。"雪解け後"

目的の茶屋に赴きその店で修行してこい。」

「「承知。」」

「名は、小助は鍬野小助(くわのこすけ)

みくは、鍬野りん、お前たちは

兄妹として修行せよ。指示はまた与える。」

「はっ。有り難き幸せです。」

「小助と兄妹?!私が姉ですよね?」

「"りん"今の瞬間から、お前は、

"鍬野小助の妹"歳は兄12歳と妹11歳とする。」

2人とも小さいから、これが精一杯だなぁ……。

ボソッと呟かれたお館様のお言葉は

サラッと聞き流す事にした2人だった。


運動神経もあまり良いとは言えないが

剣術と薙刀、身近な物を使った棒術などの

武芸は幼少のころから村の人に

教わっていたからまあまあだと思う。

むしろ体を動かすのが大好きだった。

木登りは得意だった。

家事はそこそこ、お茶の時間は

正座が苦手というかきついので長時間出来ない。

平凡な顔立ちとあとはあまり

よくわからないけれども全てが人並み??

村のみんなよりは劣っているところも

多々あるけれど、みくは"人並み"

にしか見らないとの事で、同じ8歳だった

小助と私とでお館様にこの村から

茶店屋さんに修行に出されたのだった。

みくにとっては、他のみんなのように

"一人前"として外に出て仕事をする

ということだと思っていたのだった。


"私やっと認められたのね。"


この村の名前もわからないけど、

私たちは戦いで親を亡くした孤児で

今まで山生活をし、名もない集落に

転々と暮らしていたという設定になった。

お館様の事も秘密。

"鍬野"という立派な名前は

普段は使ってはいけないけれど小助が

お役目を立派に果たし、元服したら

お館様がお名前を下さるという

仮の名前だとおっしゃっていた。

小助って名前変わらないから

私は言い間違えないけど、私の

"りん"ってかわいいわ。

小助が言い間違えないか心配だわ。

お館様、ありがとうございます。

お館様は私たちにくまよけにも

なるからといって、御守りがわりの

かわいい鈴が付いた杖を授けて下さいました。

いざとなれば武器にもなる

隠し小刀付きのすごい杖。

その鈴音を聞いていたら、目的地に

着くまで自分の仮の名も

忘れないだろうという事だと、

とある兄さんには、からかわられたけれど

かわいいものは、かわいいのよ?

髪に結んだ新しい紅の組紐も

普段おしゃれをしないりんにとって

うれしい贈り物の一つだった。

小助兄さんとりんのお揃いの物の一つだった。

お館様は私たちを心配してくださったのよ。

本当、お館様は素晴らしいお人だわ。

6つの鈴のチリンチリンとなる

場所には、いざとなれば使いなさい

と言って、本物の銭が結ばれていたのだった。

お館様ったらホントすごいわ。

本当は、私と小助は夫婦設定にしたかった

らしいけど、許嫁って感じでもないし

悩んだ末、兄妹にされたそうだ。

途中まで、六郎兄さんが一緒に

ついてきてくれ、私たちは

面白おかしくからかわれながら

やっと目的地にたどり着いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る