第5話 少女皇帝と自己紹介①クリス問題
生徒会長と入れ替わりでこのAクラスの担任をやる羽目になった教師がやってきた。まあ、原因は皇帝で理事長で学生な私なんだけど……。
「遅れてすみません。私がこのクラスの担任になることになってしまったエリーシャ・オルシアンです。1年の間よろしく。」
さっそく「担任になることになってしまった」と失言したエリーシャ先生は20代半ばで深いグリーンの髪に黒淵眼鏡をかけた気の弱そうな先生だ。会議で決まったんだけど、大丈夫かな?
「では、まず自己紹介ね。成績順にお願いします。まずは――――へ、陛下よろしくお願い致しまする。」
うん、まず最初に自己紹介は私からだよね~。そして、変にかしこまりすぎですよ、先生。
「はい。フリージア・アメジスト・フォン・フィリア=ベジリアスです。フリージアと呼んでください。一応皇帝で帝立学園の理事長ですが、基本はこの帝立学園の生徒ですので変に畏まらなくてもいいので、普通に接してもらえたら嬉しいです。」
私が立ち上がり自己紹介をする。最後に頭をペコッと下げたんだけど、拍手は隣からしかなかった。
「フリージア様?ありがとうございます。」
「いや、先生。エリーシャ先生は先生で、私は生徒なんだから様付けも敬語も要りませんよ。普通に扱ってください。」
「あ、はい。わかりました……いえ、わかったわ。フリージアさんに普通に接するよう頑張るわ。」
頑張るって言っている時点でアレなんだけど。とりあえずはこれでいいでしょう。
「次はアリスさん。どうぞ。」
立ち上がりながら私を見るアリス。たぶんアレのことだよね。もちろん今日から言ってもいいことになるので私は頷く。
「はい、私はアリス・ドージマです。フリージアさんの侍女で転生者です。見た目以上の人生経験は積んでいますが、この帝立学園の一生徒として勉学に励みたいと思います。よろしくお願いします。」
自己紹介をして丁寧なお辞儀をするアリス。拍手をしているのは私だけだ。まあ、私の侍女と転生者っていう爆弾を放り込まれればこうなるでしょう。
「ええと、アリスさんって転生者なのですか?」
「はい、先生。前世では社会人として生活していました。今世では7歳ですが、前世の記憶を使って、恩人であるフリージアさんに恩返しができるよう頑張っていきたいと思っています。」
再び拍手を行ったのは私だけだった。
「じゃあ、次はミアさん。」
「はい、ミアです。お二人と違って普通の平民です。よろしくおねがいします。」
「じゃあ次――――。」
「ホエカール侯爵嫡男オルスト・フォース・ホエカール。次期ホエカール侯爵だ。」
「次はゴリードさん。」
「おい、まだ途中だ――――。」
「ゴリード・ボス・デティシュだ。伯爵家の3男だ。」
オルスト君のツッコミとゴリード君の自己紹介が被る。
「オルスト君はクラス分けの時に自己紹介していたようなものでしたから省略しても問題ないでしょう。」
「おい。それはないだろ……あ。」
うん、貴族の子弟を黙らせるには私が言うのが一番ね。皇帝だから。
「次の人は?」
「あ、はい。エレノアです。フィージナ子爵の4女です。よろしくおねがいします。」
一番向こう側の少女が立ち上がり自己紹介する。ということは次は……。
「次は、クリスさん。」
「どっちのクリスですか?」
エリーシャ先生は男の子でも女の子でも”さん”付けだからクリスさんだとどっちかわからなくなるよのね。
「えーと、成績上位の……ってあれ?どっちも7位?」
「で、どっちのクリスからですか?」
「――――じゃあ、女性のクリスさんで。」
「むふー。」
「チッ。」
舌打ちするクリス君。うーん、ややこしいからこの二人だけは家名で呼ぼうかな。
「クリスです。実家は大工のデリネウス工房なので、家の修繕や新築は任せてください。」
そう言って頭を下げるクリスさん。
「じゃあもう一人のクリスさん。」
「……デリウス子爵家次男のクリスだ。」
「ぶっ。」
思わず何人か吹き出したわね。
「なんで家名まで似てるんだよ!」
「知らないわよ、そんなこと!」
「ここまでそっくりだと運命ですかね?」
「「なわけない”だろ・でしょ”!」」
アリスの呟きに同時に突っ込む二人。二人とも成績がいいからずっと同じクラスにいそうなのよね。
「次はケンさん。」
「ケンです。モレスティア孤児院出身です。よろしくおねがいします。」
帝立学園では試験を受けることができれば孤児院の子供でも入学できる。そして、孤児院の出ならば学費免除になる。孤児院以外は学費を払う必要があるが、貧困世帯だと卒業まで学費の支払いを待ち、卒業後に一定期間国の斡旋で仕事を行うことで免除される。ちなみに皇帝である私は理事長報酬から学費に当てているので問題ないし、アリスは孤児院にいたわけじゃないので免除にはならないが、卒業後は私の右腕になってもらうので国からの斡旋扱いで免除される予定である。
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