第12話 戴冠式③
パレードは帝城を出発し、帝都の大通りを通って1時間半で帝城に帰った。そして、外交の場になる戴冠祝賀パーティーが始まった。なお、このパーティー、参加者が多くなりすぎるとの事で2部構成になっている。まず最初に他国から参列した使者と伯爵以上の高位貴族。第2部は子爵以下の下位貴族になる。例外的に子爵のリー姉ちゃんは私の準側近扱いで第1部に参加してもらった。これは後見人であるフィリップス卿に面倒をみてもらうための苦肉の策だ。まあ、戴冠式で大役を任されるほど信頼していると見られるだろうから大丈夫だと思う。
ちなみに、パーティーの入場順は通常なら爵位が低い順なのだが、第1部で1番爵位の低いリー姉ちゃんは引率(笑)のフィリップス卿に合わせてかなり後ろになっている。他国の王族の直前だ。がくがくに緊張しているみたいとアリスが言っていた。そりゃあ、半月前まで下位貴族の男爵家のさらに四女だったから、こんな高位貴族の中に当主としていること自体想定外だろうからね。
大広間に参加者が揃ったようだ。さあ、行こうか。
「皇帝陛下が御入場されます。」
侍従長の言葉に、歓談していた参加者は頭を下げる。私のエスコート役は本来婚約者がつとめるのだけど、婚約者はいないし親族もいない。フィリップス卿だと身長差が大きすぎるのとリー姉ちゃんを任せる関係上エミリ姉さんを借りた。変に男性にエスコートされたら婚約者の疑惑が起こるのが面倒だし。
「楽にしてください。」
私が玉座に座り、そう声をかけてパーティーを再開させる。
パーティーが再開されると、続々と私に挨拶に来る人の列ができ始める。この場での最上位の私に挨拶をする順番も決まっている。招待客には私から挨拶しに行き、それ以外は私の方に挨拶しに来る。基本階級順だが一部例外はある。それは私の婚約者になるのだが今回はいない。だが、一番低いリー姉ちゃんが例外的にフィリップス卿と最初に挨拶に来る。これは事前に打ち合わせておいたものだ。
「皇帝陛下にフィリップス侯爵がご挨拶を致します。」
「こ、皇帝陛下に、……えーとアイランド子爵?がご挨拶しましゅ。」
どもったし、えーとって言っちゃったし、自分の爵位が疑問形だし、最後に噛んだ。
「緊張しなくてもいいですよ、アイランド子爵。公式の場ではリリーシャと呼ばせてもらうけどいい?」
「あ、はい。」
さすがに内輪でならリー姉ちゃんと呼べるけど、公式の場でリー姉ちゃんとは呼べないからね。あとは……。
「では、リリーシャ。余のこともフリージアと呼ぶことを許す。」
「ありがたちしあわしぇ。」
おおーと立ち上がる歓声。皇帝が名前を呼ぶことを許すことは信頼の証で、私が初めて名前で呼ぶことを許したリー姉ちゃんは皇帝フリージアから最初に信頼を公式に認めた貴族となる。それはそうと、リー姉ちゃん噛みまくりだなあ。まあ皇帝の前に出ることに緊張しているんじゃなくこの場に緊張しているんだろうね。しばらく談笑していると、緊張がほぐれたみたいだ。
「では、後ろもつかえておるでしょうし、我々はこれで。」
「失礼します。」
「フィリップス卿、リリーシャの事を頼みます。」
こう言うことでリー姉ちゃんが皇帝である私と、侯爵であるフィリップス卿の庇護下であることを回りに見せつけておく。こうしておけば、彼女を守る盾になるからね。
ある程度挨拶を終えた私は、予定どおり退席する。理由は10歳だからということになった。子供は早く寝なさいってことだ。同じように未成年の貴族も帰ることになる――――――が、そのうち2人、子爵当主と侯爵令嬢は帰ることはなかった……。いや、普通に帝城の皇帝の私室にお呼ばれしたからだ。ちゃんと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます