第2話 少女皇帝と生き残り
謁見ラッシュの翌日から見込みのある貴族との会談を政務の合間に行う。現在の課題は財務だ。外務は職務で外国にいた外務卿に早馬で事情と当面の帝国の方針を伝え、各国を回ってもらうことにしたので、しばらくは問題ないだろう。まあ、帝国にいる各国の大使にはすでに葬儀の準備が整うまで緊急の用件以外対応できない旨を伝えたので、こちらのルートでも情報がいっているはずだ。他国の王族の弔問もお断りしている。空気読めよ。
さて、財務だが、実は財務卿が持っていっていた書類は写しであったため、原本が残っていたのである。それを残っていた財務官僚と一緒に確認作業をしている。まあ基本は資料から納税かちゃんとしているか、財政が健全であるか、あと葬儀の費用捻出が必要である。
「侍従長、あの場所はどこの領地になる?」
財務室で資料と格闘しながら気づいたことを聞く。
「そうですね、元々避暑地として離宮でしたので、皇帝家で所有していた直轄地です。」
なるほど。あの土地を領主から分割する必要はないのね。ということは。
「じゃあ、あの場所の管理をしていた代官はひょっとして……。」
「ええ、あの時に……。」
「じゃあ、一族全員巻き込まれたの?」
もし、そうなら早急に新しい代官を決めなきゃならない。
「そうですね、調べてまいります。」
「よろしく。」
侍従長は確認のため退出した。
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさい。どうでしたか?」
戻ってくるのに30分ほどかかっていた。
「はい、代官の一族、アイランド男爵家はあの日一族すべてリクラウドの離宮やその近くの代官屋敷におられました。…………一人を除いて。」
「!!、生き残りがおられるのね!!」
侍従長の言葉を聞いて声を上げる私。だけど、その後の報告に言葉を失う。
「ええ、男爵家の四女がたまたま友人の家に遊びに行って難を逃れてます。ただ、そのご令嬢は13歳の帝立学園の1年で1学期に仲良くなったご令嬢の実家に行っていたとのことです。今回の災害で父方の祖父母、ご両親、ご兄弟が8人と叔父夫妻とその子供4人を亡くされております。」
しばらく呆然としたあと
「――――皇帝家よりダメージが大きいわね。で、現在そのご令嬢は?」
「逗留中の家におられるとのことです。」
私は少し考える。皇帝としてどう動くべきか。
普通なら呼びつけるのが適当だと思うけど……。
「侍従長、明日その家に向かうわ。先触れをお願い。あと、アイランド男爵は職務に忠実で殉死された。その功績で子爵に陞爵。そのご令嬢……名前は?」
「リリーシャ様です。」
「リリーシャを女子爵とし、リクラウド周辺を領地とする。また、アイランド家は我が皇帝家が保護する。これは葬儀の日に発表することとする。」
「は。ではその様に。」
そう言って侍従長は退室し、書類に作成に入った。
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