第148話 のんびりした1日(アンナの愛サラダ)
我が家で休日を楽しむ夏希。
夏希の我が家に昼御飯の時間がやってくる。
「なあ、今日は天気がいいから昼御飯は外で簡単なバーベキューでもしないか?大きい鶏肉と醜い豚肉と美味しい野菜達があれば大丈夫だろ」
「それがいいのじゃ!少し暑い中でのバーベキュー。旨いものを食べてキンキンに冷えたビールを飲む。これは最高なのじゃ!」
スズランは立ち上がり、仁王立ちして吠えまくる。最後にオマケで「ガハハハ」と笑っている。
「アンナもバーベキューしたいの!」
アンナも跳び跳ねて大喜びだ。
「ふふふ、では皆のもの、出陣じゃ!」
「「おーー!」」
真冬は掛け声をせず無言で歩いていく。ただ、その歩みは軽快なスキップであった。
4人は外に出て宴会場の準備を始めた。
「俺がアイテムボックスから色々出すから、適当に準備してくれ」
夏希は適当にアイテムボックスから適当な物を出していく。(のんびりやろうぜ!)
テーブルセットたくさん、バーベキューコンロたくさん、炭をたくさん、トングをたくさん。
「夏希……ワレ達は4人だぞ?アホなのか?」
「ん?よく言うだろ?「備えあれば待ち人来る」って。俺が好きな言葉だ。いいだろ?」
真冬はため息をついて夏希に言った。
「それは違う。「備えあれば売れるもの多し」だ」
「おお、どちらもワレの心に響くのじゃ」
3バカトリオの結成である。
そしてテーブルセットを準備していると…
「おーい!何してるんだー!」
ラグ達が夏希家に向かって歩いてくる。
「ほら!言っただろ?待ち人来るって。たくさん放り出したから、たくさん待ち人が来たぞ」
「ホントなのじゃ!夏希は凄いのじゃ!」
この2人が3バカトリオのツートップである。
夏希は鼻高々にテーブルセットに食材をアイテムボックスから出していく。そしてラグに話し掛ける。
「ラグ、いいところに来たな。今からバーベキューするから裏庭に来てくれ。食材の解体を頼む」
歩いて来たのはラグ夫婦とネネとカイルだ。
「それなら私も解体を手伝おう。カイル、お前はここの準備を手伝え。夏希、行くぞ」
「ネネさん、助かります。ラグ、付いてこい」
「なんだよその態度、ネネと対応が違わないか?」
「当たり前だ。俺は強き者に
夏希は自信満々にラグに語る。
「いや、それは駄目だろ」
3人は和気あいあいと裏庭に向かう。
「それじゃあ、私達も準備しましょうね」
サーラの指揮のもと、残りのメンバーはテキパキと準備を進めていく。
夏希は裏庭で解体した大きな鶏肉を調理用としたテーブルの上に取り出してバーベキュー用に切り分けていく。ついでに野菜も切り分ける。適当な大きさに。
「夏希お兄ちゃん、アンナはサラダを作りたいの。夏希お兄ちゃんだけに食べてもらうサラダを」
アンナはニコニコしながら夏希に話し掛ける。
「お、そうか?それは嬉しいな。じゃあ、そこにある食材で美味しいサラダを作ってくれるか?」
「うん、判った!」
アンナはサーラに「イチコロサラダ作るの!」と言い、サーラは「ふふふ」と笑う。
本日、夏希の試練「初級編」の始まりである。
アンナは夏希が準備している横のテーブルでサラダを作り始めた。
「今日はね、甘くて美味しいニンジンサラダと甘くて美味しいたまご焼きを作るの。アンナと夏希お兄ちゃんのような「あまーい」関係のサラダなの」
アンナは絶好調のようだ。
夏希はそんなアンナを見て微笑みながら、食材を適当に切っていく。
「それではニンジンをカットしまーす」
獣人村で育った野菜は大きくて立派だ。
「ダンダンッ!」
「はい、出来ましたー!」
(えっ!あれって4等分だよね?あと皮はどうしたの?見た感じは自然そのままだけど……)
「夏希……ワレはほんの少しだけ背筋が寒くなってきたようじゃ。この炎天下でな」
夏希も不安になりアンナに声を掛ける。
「ア、アンナちゃん?そのニンジンさんは皮をムキムキしないの?あとサラダは完成なの?」
「そんなわけ無いよ。これからだよ?あとお母さんが皮には栄養がたっぷりあるって言ってたからね。夏希お兄ちゃんには元気いっぱいになって欲しいからそのままにしたの!」
(うん、これは仕方ないな。別に皮があっても問題無いしな。気にし過ぎたな)
その横ではサーラがスープを作る為にニンジンの皮剥きをしていた。「ふふふ」と笑いながら。
「それではニンジンサラダの仕上げをしまーす」
アンナはキャベツを手に取ると「ベリッ」と一枚剥ぎ取る。そして手で適度な大きさにちぎり、4等分のニンジンに巻き始めた。
「赤いニンジンにキャベツのお布団を巻きましょうね。アンナと2人で「おやすみなさい」するのー!)
アンナは「うふふ」と絶好調笑いである。
「この2つ一緒に巻いてるのが夏希お兄ちゃんとアンナなの。そしてあとの2つは2人の愛の結晶。男の子と女の子の赤ちゃんなの!これで完成なの!あとはたまご焼きを添えるだけなの!」
(新鮮で美味しそうだね……せめてドレッシングでもあればいいんだけど……確かにそのままでも美味しいよ。そのままでも。でもね。なにか違う)
「ぶふっ!夏希、良かったの。アンナは料理上手なようじゃ。たまご焼きが楽しみなのじゃ」
スズランは準備をやめてアンナの料理を眺めている。それはもうとても嬉しそうに。
(ぐぬぬぬ、スズラン、覚えておけよ)
「それでは、たまご焼きを作りまーす」
アンナはボールに卵を打ち付ける。絶好調の力で。
「グシャ!ベチョッ、パラパラパラ~」×3回
勢いよく叩き付けられた卵は砕け散り、欠片と共に白身と黄身が潰れて混ざり合い、握り潰された残りの欠片は粉雪のように綺麗に降り積もる。
(えっ!なんか怖いんですけど……)
アンナは砂糖の袋を手に持ち、絶好調振りしてボールの中のナニカに猛吹雪を巻き起こす。
「ザザザー、ザザザー」
夏希とスズランの脳裏には、砂浜に座り波の音をのんびりと聞いている光景が浮かんでいた。
そして夏希がネットスキルで買ったカセットコンロの上にフライパンを乗せて焼き始める。
「ドボッ!」
食材が出す音では無い効果音を発してナニカがコンロの最大火力で炙られていく。
(あの……あれ放置してるよね?焼いてるのに見てるだけだよね?フライパンを1度も振ってないよね?)
「おお!綺麗な色に変わってるのじゃ。まるでフルーツ飴を作った時のようじゃな」
(その通りだよ!正解だよ!)
アンナの絶好調見極めは修行の賜物だ。飴色になったたまご焼きを素早くコンロから下ろして冷ます。
「ゴロン」
不適切な効果音を発して、たまご焼きがこぼれ落ちる。まな板の上に。
「ぶふっ!あ、あれはガリガリしてとても旨そうなのじゃ。夏希が羨ましいのじゃ」
スズランは夏希にだけ聞こえるように話す。
「それでは仕上げをしまーす」
アンナか手提げ袋から取り出したのは勿論色々な花達。綺麗な赤色、可愛い黄色、毒々しい紫色。それを慣れた手付きで「ペタペタ」と貼り付ける。
「な、夏希、あの「ぶふっ!」む、紫のヤツは麻痺草の花だ。食べたら痺れるから気を付けるのじゃ」
スズランは腹を押さえながら小声で話す。
アンナは真っ白な大きなお皿に並べてあるニンジンのキャベツ巻きサラダの横にたまご焼きを飾る。
「はい、これで完成なの!素敵なの!」
「ふふふ、アンナ。貴方の王子さまを見てごらん。幸せそうな顔をしてるわ。もうイチコロ寸前よ」
「うふふ、やっと潰せるね。本物の胃袋を」
似た者親子である。
そして夏希の試練「初級編」はどうなるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます