第126話 闇に落ちた者達(6)
闇の深淵に自ら落ちた夏希。
夏希と信吾の深黒の魂が共鳴している。夏希はその深黒の魂から闇を少しずつ吸収する。
(まだか…意識が遠くなる。間に合うのか……)
信吾の魂は徐々に深黒から黒に変わり、淡い黒にまで変化が進んでいる。
あともう少しという時、信吾は魂の共鳴に耐えることが出来なくなった。
「うがぁーー!!」
「ザシュッ」
信吾は夏希の左肩に食い込んでいる剣に力を入れて斬り飛ばす。夏希の左腕を。夏希はこれで押さえ付ける事が出来なくなった。(あともう少しなのに)
右腕のみで拘束力が無くなり、振り払われると思った瞬間、左腕側に再度拘束力が戻った。
「踏ん張れ!夏希!」
夏希は無くなった腕を見る。そこには小さな手と身体を広げ、夏希の左側を支える黒い幼女がいた。
「スズラン!」
夏希の意識が鮮明になり、残りの闇を吸収する。
そして信吾の魂から闇は全て消え去った。
信吾は魂の共鳴に耐えきれず起き上がって来ない。夏希はスズランに支えられながらその場に座り込んだ。
(ふぅ、治癒魔法で血は止まってるが治るのかなこれ。斬り飛ばされた腕を探さないと……ん?)
正樹が走ってくる。夏希の腕で手を振りながら。
「気色悪いわ!俺の手だけど…」
正樹の治癒魔法で腕は元に戻った。(あのね、治癒魔法で傷口が塞がってるからもう一度腕を切ったんだよ……ザクッと。その後着けたの…もう腕無くさない)
「夏希 あまり支援出来なかった ゴメン」
真冬が謝ってくる。
「まあそんな時もある。気にするな」
「次 頑張る」
(えっ?次は無いよね?もう無いよね?)
夏希は左腕を動かしながら話し始める。
「なあスズラン、説明してくれるよな?俺の魂に何かしただろ?信吾の闇を取り込んだのに、前より調子がいいんだよ?おかしいよな?」
スズランは静かに影へ半分ほど沈んでいたが、諦めたように影から出て夏希の前に来た。
「夏希が悪いのじゃ。ワレと約束したよな?闇に落ちないと。だからこれは仕方がないのじゃ。」
夏希は罰が悪そうにスズランに謝った。
「ワレの闇で縛ってるのじゃ。夏希の闇をな。だから身体と心が開放された感じになってる筈じゃ。」
夏希は話を終えようとしたスズランに「続きを話せ」と目で訴える。
「まあ、そのなんじゃ。お陰でワレはもう人並みの威力の魔法しか使えん。闇に紛れることも出来なくなる。出来るのは夏希の影に入ることぐらいじゃな。たぶんあと数日で今掛けている魔法は切れるのじゃ。」
「それって俺の影から出たら天使にバレるって事だよな。大丈夫なのか?」
スズランからの返事は無い。夏希も後で話し合う事にして次の課題に取り掛かる。
「スズラン、信吾はこれからどうなるんだ?」
夏希は天使モドキの信吾を見ながら話す。
「信吾の闇は無くなったが天使モドキのままじゃな。ワレではどうにも出来ない。天使の暗示は解けている筈じゃから、目が覚めれば見た目は違うが元の信吾に戻っている。と思うのじゃ」
夏希は考えている。
「真冬、頭だけ出して埋めろ。固さマシマシで」
「ぶっ!宮田さん、それはちょっと……」
正樹が夏希を止めようとする。
「だって危ないじゃん。強いんだよ?こいつ。知ってる?何なら手足斬っとく?後で着ければいいし」
いつもの夏希である。
そして話に真冬が割り込んでくる。
「夏希 この黒なに?」
「ん?ああ、ペンギンの中身」
真冬とスズランの視線が交差する。そして真冬はアゴでスズランに指示をする。
スズランは観念したようで影からペンギンの脱け殻を取り出して装着するとペタペタと歩いていき真冬の前で待機するのであった。
真冬は眠たい目をして静かに歓喜する。そしてペンギンに手足を絡めて抱きつくと夏希に話し掛ける。
「続き どうぞ」
まさにカオスである。
「正樹、アースカッターで切断だ」
夏希は慣れたものである。
夏希と正樹がどう拘束するかを話し合っていると、は風の音や鳥の声が聞こえなくなる。
物語は唐突に次のステージに移る。
夏希達以外の全ての時間が止まった。
本物の天使の登場である。
「待ってたよ。天使カルレス」
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