第114話 スザンヌとビエラの送別会(2)
スザンヌとビエラの送別会をする夏希。
参加者が全員集まり送別会が始まった。
「それでは、スザンヌさんとビエラさんが無事にバルバドスの王都に戻れる事を祈って、乾杯!」
「「「 かんぱーい!」」」
大人達は好きなお酒を飲み、子供達は夏希が準備した果汁と炭酸のジュースを飲んでいる。
「くはっ!このエールはえらい旨いね!キンキンに冷えてるし苦味とキレがあってのど越しが最高だ。夏希、これってホントにエールかい?」
「スザンヌさん、これはビールと言ってエールとは少し違うんです。原料はあまり変わらないけど酵母と作り方が違うんです。まあ、旨いでしょ?飲んで」
「あ、ああ」
夏希は説明が面倒になったようだ。
そしてスザンヌは生返事をしている。何かを気にしているようだ。視線が夏希からズレている。
「夏希、まぁ、その、なんだ… お前の横に座ってるのはなんだ? 見たことない魔物なんだが……それ、被り物だよな?中は人だよな?」
実は他参加者達も送別会が始まった時から、その不思議な生物を気にしていた。言えないだけで……
「ん?これはペンギンと言う動物です。襲ったりしないから大丈夫ですよ。ほら、飲んで」
夏希は通常運転だ。
「いやいや、説明それで終わりかい?それ絶対に人が入ってるだろ?クチバシの根元の下からビール飲んでるよ。それにさっき「ぷはー」って言ってたよ」
「ああ、ペンギンは口が2つあるんです。それと言葉も判るし喋る。凄いでしょ?ペンギン」
「夏希………………… このスペアリブって肉は甘辛で肉汁も凄いな!ビールに合うね」
スザンヌは諦めたようだ。周りの参加者も今は各々で楽しく会話を始めた。さすが夏希をよく知る人達だ。
今はニアとサラさんが肉を焼いてくれている。
「はい、お肉と野菜が焼けましたよ~。タレはテーブルに何種類か置いてあるので色々と試して見てください。私のオススメは「甘口」と書いてあるものです」(この世界の文字で事前に紙に書いて張り付けてるんだよ。俺頑張ったんだよ)
ニアがそう言うと、子供達が真っ先に集まり「肉!」と叫びながら皿に山盛りに乗せていく。さすがワンパク小僧達だ。(獣人村の野菜も美味しいから食べてね)
「うぉ!この肉すげぇ旨い。口の中で溶けてくぞ。歯なんてもう要らねーな!」
歯は大切にしような。
「アスザック、このニアさんオススメのタレで食べてみろよ!永遠に食べれるぞ!」
それ、肉じゃなくて白米に掛けてるよね。肉も食べようね。まあ白米にタレは美味しいけどね。
「夏希兄ちゃん、肉も旨いけど、この炭酸ジュースも冷たくてシュワシュワで旨いよ」
お前は普通のコメントだな。
子供達には好評みたいだ。皆、テーブルではなくバーベキューコンロの前で皿を片手に話ながら仲良く食べている。なので焼く係を子供達に任せてみたら、皆喜んで交代してくれた。(野菜も焼くんだぞ)
ニアとサラさんは大人のテーブルに合流する。ニアは夏希の隣でサラさんはランブルの隣だ。
皆を見ると各々の好みや個性があって面白い。夏希はニアとベンギンに小声で話す。
「おい、ランブルを見てみろよ。バレないようにだぞ。アイツずっとスペアリブばかり食べててな、食べ終わりは必ず残った骨を口に入れて何かを吸い出してるんだ。「チューチュー」音鳴らして吸っても何も出ないのにな。何か呼んでるのか?あの音で?壁からネズミでも出てくるのか?お前らもやる?」
「「 ぶほっ!」」
ニアとペンギンは飲んでいたお酒を吹き出して周りの皆に変な目で見られていた。
「次はスザンヌさんだな。見つかるなよ。凄い筋肉してるだろ?だから肉を豪快に食べてるイメージだよな。でもな。違うんだよ。酒飲む時は豪快なんだけど食べる時だけはナイフとフォークを持って綺麗な姿勢で食べるんだ。しかも一切れが小っちゃいの。似合わないよね。筋肉のクセして。ほら見ろよ、おちょぼ口筋肉だ」
「「 ぶふー!」」
ニアは両手で口を塞いだが、10の指の隙間から8のウォーターカッターが「プシュー」と音を鳴らしながら放たれていた。ベンギンは黄色いクチバシの先が徐々に湿り雨漏りのようにビールが滴り落ちていた。
「夏希さん、もう勘弁してくださいにゃ」
ベンギンは皆に見えないように夏希のお尻に微弱な黒雷を連続で放っていた。
「え~、でも〆のルンバ師匠が残ってるんだよ。あの黄色いネズミだよ。もう面白いよね」
2人は誘惑に負けそうだったが何とか堪えたようだ。
「仕方ないね。またにしような」
送別会は始まったばかりだ。これは長丁場になると夏希は思うのであった。(10話は続きそうだな)
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