第103話 幕間 乙女騎士団の領主お宅訪問(4)
領主邸でも通常運転の乙女騎士団。
乙女騎士団の4人は応接室で緑茶を飲んでいる。
「それにしても異世界人って他にも居たのね」
「そうだね。どんな話しになるんだろうね」
「コンコンッ」
4人が話をしていると執事のトーマスが領主テムズを案内してきた。
「よう、待たせたな」
テムズは机を挟んで向かい合わせのソファーに座り話し始める。
「まずは礼を言う。この街を守ってくれて本当にありがとう。お前達や他の仲間が居てくれたお陰で街の被害も少なくて済んだ」
テムズは頭を軽く下げた。
「いえ、そんなことは…」
「はは、そりゃあお前達だけが街を守った訳でないのは判ってるさ。俺の部下達や冒険者達、あと街の人達も戦って掴んだ勝利だ。
お前達がやった事だが戦闘は勿論強かった。だがそれよりも、お前達の行動が皆に戦う勇気を与えてくれた事が良かった。
乙女騎士団の凄まじい戦闘を見て奮い立った冒険者達、結界を張って街の人々を守りまた怪我を治した少女、空を飛び回り魔物を倒し街の人々を助けた少年。
目立って無かったが他の仲間達は街の人々の避難誘導と意識統一、先導をして街の人々を守った。
それは街のほんの一部だが、その行動が皆に希望と勇気を与え強い意思となって街全体に広がったんだ」
4人はテムズの言葉に戸惑っていた。
「お前達は自分達がしたことに誇りを持て」
テムズは4人の気持ちを理解していた。
「その話しはここまでだ。ここからはお前達が気になる話しだな」
テムズは緑茶を飲んで一息入れる。
「まずは何故お前達が異世界人と判ったのかだが、俺は王都に居る異世界人に何度か会って話したことがある。その異世界人と特徴がよく似ている。黒髪で顔の彫りが浅い。あと魔法の威力が桁違いだ」
4人は納得したと頷く。
「異世界人だが昔から何度も現れている。1人の時もあれば集団で現れる場合もある。この国だけでも過去100年で200人は居た。この数字は存在が確認され記録として残っているものだけだ」
テムズは皆の表情を確認して話しを続ける。
「その異世界人達は特異なスキルや強力な魔法を持っていて、国に仕える者が居れば平穏な人生を望み静かな人生を送る者も居た。だが反対の行動をする者も数多く居たのも事実だ。
この事を詳しく知っているのは国の上流貴族だけだが、関わりを持った人達は大勢居るから、実際は誰でも知っている事かも知れない」
4人は話しは理解しているが、どう反応していいか戸惑っているようだ。
「あとこの国での異世界人に対する処置だが、基本的には何もしない。こちらから強引に関わる事はしない。
異世界人から接触してくれば、その人物の性格や実力に見合った対応をする。それだけだ。
これは、この国の初代国王が異世界人だった事が大きな要因だ。今もその家系が王族だが伝え続けられている言葉がある。それがこの言葉だ。
[ 異世界人に不用意に関われば破滅の恐れもある ]
だから深くは手を出さない。
今この国は平和だ。だからこの言葉を守っている者が多い。だが、そうでない者も少なくない。戦争が起きればもっと多くなる」
テムズは話し疲れたのか大きく背伸びをする。
「まあ、結論としてはお前達は自由に生きろ。何かあれば自分達で解決しろ。それだけだ。ああ、戦争とかがあったらどうなるか判らないぞ。それと他の国はどうなのかも判らん。
俺はもう話し疲れたし今日はここまでだ。お前達も考える時間が必要だろ?」
4人は各々で考えに浸って静かである。
「他の仲間達とも話し合ってみるといい。あと1つ提案だが、王都に居る異世界人と会って話しをするのもいいと思うぞ。その気があるのなら来週王都に行く用事があるから連れて行ってやる。それも考えておけ。返事は俺にでもトーマスでもいい。期限は3日後までだ」
そう言ってテムズは出ていった。
4人は無言のまま領主邸を後にしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます