第81話 ディプル草を求めて(1)
師匠ルンバから薬草採取を依頼された夏希。
夏希はルンバから水魔法の師事を仰ぐ為に、ある薬草を採取する事になった。
「ニア、行って来たよ。ちょっと変わった人だったけど師事してもらえそうだなんだ。ただ、今ギルドに出している依頼を完遂するのが条件と言われたんだけど判る?」
ニアは手元の書類からルンバが出した依頼書を探している。
「夏希さん、ありましたにゃ。ふむふむ、ディプル草の採取依頼ですね。依頼書が発行されて3ヶ月は経ちますね」
(ニアの「にゃ」の使い分けが上手くなってきてるな。適度な「にゃ」が、好感度アップだ!)
「夏希さんがよく行ってる森で2つコブの高い山が見えますよね。あそこの麓にあるのにゃ。森の中を2日程歩かないと行けない上に量も採れないから、報酬との兼ね合いが悪いので残っているのにゃ」
ニアが説明と一緒にディプル草の資料を渡してくれたのでそれを読みながらニアの話を聞いた。
なるほど、よく判った。
「ニア、説明ありがとう。この依頼を受けるから処理を頼むね。明日の朝、出発するよ」
「はい、気を付けてくださいにゃ」
夏希はギルドを出て、明日の準備をする事にした。
最低でも往復で4日だ。念の為、一週間分の準備をしよう。夜はどうするかな?森だから木の上で寝ることは出来るが一週間はキツいな…雑貨屋で何かないか見てみるかな。
夏希は保存食と小物を少し買って雑貨屋に向かった。
「こんにちわ。夜営道具を見に来たんですが、1人で行くので夜寝るのに何かいい物ありますか?」
雑貨屋の店内は広く、あらゆる物が売っていた。店から出て来たのは恰幅の良いおじさん店主だった。
「いらっしゃい!1人夜営かぁ、そうだな…ちょっと待っててくれ」
店主は棚にあった革を巻物状にした商品を持って夏希の前に置いた。
「これは防水性のある素材で作ったハンモックだ。普通に木と木の間に紐で結んで使うが、木1本に紐で巻き付けて座る部分が深い椅子の様にする事も出来る。これだったら多少寝相が悪くても落ちる心配は無いし、魔物に襲われてもすぐに動けるぞ」
うん、これがいいな。
「良さそうですね、これをください」
「毎度あり。他にも必要な物があったら言ってくれ」
夏希は店主に他に必要な物は無いと言って店を出た。
いい買い物が出来たな。まだ夕方前だが宿屋に戻って早めに寝る事にしよう。
夏希は宿屋に戻り、美味しい夕食と気持ちいいお風呂を堪能して部屋に入った。
「スズラン起きてるか?」
少し待つと影からスズランが出て来た。
「どうしたのじゃ?」
「ああ、明日から森の奥の山の麓まで薬草を採りに行くんだけど、スズランも一緒に歩いて行くか?珠には運動した方がいいだろ」
「そうじゃのう…偶にはいいかの。冒険者には見られたく無いから森の奥に入ったら歩く。ワレもご飯を食べるから準備しておくのじゃ。美味しいモノを頼むぞ」
そう言ってスズランは影に沈んで行った。
美味しいご飯か…ネットスキル見ておくかな。
夏希がネットスキルを見ようと思っていると、
「ピコン」
と、メールの着信を知らせる音が頭の中で鳴った。(天使の着信の時だけ、この音が鳴るんだよな)
朝問い合わせした返事かな?早かったな。
夏希は天使からのメールを確認した。その内容はやはりネットスキルの事だった。
[ 本来ならば返答はしないけど、今のままでは制約解除が永遠にされそうに無いので特別にヒントと1つだけ解除条件を教えてあげる。このネットスキルはね、他の天使や神が創造したスキルでは無く私が私好みに合わせて新しく創造したスキルなの。
私が魂の変化を見るのが好きだと教えたわよね。だから魂の変化と同じ様な解放条件にしてるの。「生存、関係、成長」の3つに関わる何かを成し遂げた時に制約は解除されるわ。だから貴方自身のレベルが特定のレベルに
あとは、解除条件ね。ネットスキルで購入した物を使って商売をし利益を出す事。継続でもいいしスポット的でもいいわ。これも成長に関わる事になるの。
頑張ってね。天使カルレスより ]
うん、何となくだが判ったような気がする。
それと1つだけ教えてくれた解除条件だが、商売か…
スポットで屋台でもやってみるかな。ネットから調味料なんかを購入して料理を作って売ればいいだろう。
まぁ、薬草採取から戻ってからもう一度考えよう。
あと鼎からもメールが来てたな、読んでみるか。
鼎からのメールを確認すると夏希は驚いた。
鼎達が住む街でスタンピードが起きたのか…皆は無事みたいだが、結構な人数の住人が亡くなったな。このトバルの街は近くにダンジョンが無くて良かった。
なんかやる事が色々増えたな…
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