第73話 幕間 バルバドス王国 スタンピード(4)

 スタンピード発生でアンデスの街に危機が訪れる。


 鼎達は皆との打ち合わせを終わらせギルドに向かっている。4人は既に戦闘態勢が整っているようだ。


 特に鼎は全開モードで驀進中ばくしんちゅうだ!


「鼎ちゃん、魔物を全部倒すって言ったけど、私達はDランクだから後方支援になるよ。シルビアさん、そう言ってたよね」


「桜さん、大丈夫。作戦は既に考えてあるから」


 桜はそう言った鼎の表情を見て少し不安になるのであった。(鼎ちゃん…大丈夫よね…)


 ギルドに着いた4人。既に召集による集会は終わっているようで、冒険者達は指示された配置に向かおうと隊列を整えていた。辺りは各配置のリーダーと思わしき人達が声を張り上げている。


「後方支援部隊は、こっちに集まってくれ!今からどの区域を担当するかの班編成をする。急げ!」


「遊撃部隊は、すぐに街の北門前に集合だ。ここは冒険者達で溢れている。北門前で編成するぞ」


「防衛部隊は、この場所で班編成するわ。周りが落ち着くまで少し待機していて」


「魔法部隊は、訓練場に集合しろ!そこで班編成をする」


 他の担当リーダーも皆が混乱しないように冒険者達を誘導している。


 ギルドに集まっている冒険者は2000人は居るだろう。その内、Bランク以上の冒険者は300人程度だ。CランクとDランクの冒険者が圧倒的に多い。


 鼎達は情報収集の為、ギルドに入りシルビアさんを探がす。ギルド内も職員が総出で慌ただしく動いている。遅れて来た冒険者も多く、ギルド職員に指示をもらっている。シルビアさんは受付で急がしそうに書類を確認していた。


「シルビアさん、遅れてごめんなさい!状況を教えて欲しいんですがお願い出来ますか?」


 シルビアは作業の手を止めて話し始めた。


「鼎さん、来るのが遅かったですね。見ての通りもう説明集会を終えて各配置ごとに行動を開始しています。説明しますので座ってください。説明後は後方支援部隊に合流してもらいます」


 シルビアは焦りの為か少し苛立っていた。


「スタンピード発生の連絡から既に2時間経過しています。ダンジョンではスタンピードの予兆があったのでAランク10名、Bランク10名、Cランク20名の計40名に待機依頼を出していました。


 今はダンジョン前の防護砦から遠距離攻撃で魔物の数を減らしています。ですが、未だにダンジョンから魔物が出て来ており、現時点で1万は越えていると思われます。


 街の正規騎士団は、ダンジョンから街までの間に幾つかの防衛拠点を準備して対応する予定です。人数は総出ででも1000人程です。魔物が通過する場所を両サイドから挟み込んで、遠距離から中間距離攻撃での数を減らす作戦です。攻撃は魔物を誘導する部隊、遊撃部隊、防衛部隊に別れます。


 なので、街の防衛は冒険者ギルドが対応します。正規騎士団上層部と街の警備兵は残っていますが、防衛戦には直接的に参加はしません。街の住人対応をします。


 防衛戦は北にあるダンジョンから街に一直線で来るように正規騎士団が調整しますので、北門に7割の人員を配置します。残り3割は各方角の門に1割ずつの配置です。


 街に来る魔物の数と種類は現時点で把握出来ていません。正規騎士団との連絡、連携が上手くいって無い様です。


 説明漏れはあるかも知れませんが、必要な部分は説明出来たと思います。この後、鼎さん達には後方支援部隊に行って貰いますが、怪我などしないように気を付けてください」


 そう言ったシルビアは書類の確認作業に戻った。


 4人はシルビアにお礼を言って受付を離れ行動を開始した。


「魔法部隊に合流するわよ。たしか訓練場だったわよね。皆行くわよ」


「お姉ちゃん、私達は後方支援部隊だよ。いいの?」


 雫はちょっと心配そうだ。(大丈夫かな?色々な意味で)


「大丈夫よ。付いて来なさい!」


 鼎達は忙しく後方支援部隊の班編成を行っている冒険者達の真横をさ颯爽さっそうと歩いて行く。


「おい、あれ乙女騎士団の女の子達だよな?」


「ああ、確か俺達と一緒のDランクだった筈だ。この間上がったばかりだから変わってないと思う」


「でも訓練場に向かってるみたいだぞ?なんで?」


 乙女騎士団は冒険者達に結構人気があり、単独行動しているのは既にバレ始めていた。


 鼎達が訓練場に入ると約200人程の冒険者達が班分けを終わらせて、上位ランクの冒険者をリーダーとし、班ごとに打ち合わせをしている所だった。(魔法使いは冒険者全体の1割程度が常識だ)


 鼎はこの部隊の総指揮官であろう冒険者が、数名の幹部あろう冒険者と話をしている所に向かった。


 鼎達はこの指揮官と幹部達を知っている。[ 爆炎の不死鳥 ]を名乗るこの街では有名なAランクパーティーだ。6人メンバーで4人が魔法使いだ。リーダーは目の前に居るこの指揮官がそうで、名前はエドガーさんだ。


「エドガーさん、魔法部隊に入ります。指示をください。あ、入ると言っても遊撃隊になるつもりなので他の班との連携指示をください」


 鼎は全開モードである。


「ん?確か[ 乙女騎士団 ]だったよな。お前達、集会の時居なかったよな?それとランクはDランクじゃなかったか?」


「はい、集会は急いで向かったんですが間に合いませんでした。ごめんなさい。あと、ランクはDランクで合ってますよ。でもホントはもっと強いのでコチラに来ました。戦力必要ですよね?特に魔法使いは」


 鼎は全開モードである。


「い、いや強いって言っても…」


 エドガーは鼎の勢いにタジタジである。


「強いと言うがギルドランクは適正に判断されているものだ。確かに魔法使いは少いので戦力は欲しい。しかし、低ランクの魔法使いでは魔力は少いし威力も厳しいから、この部隊にはい……」


「あぁ、もう面倒になってきた………」


「真冬!ゴーッ!!」


「雷撃 激強」


「バリバリバリッ!!ズッガーン!!」


 訓練場は鼓膜が破れる程の轟音と目が潰れる程の閃光に包まれた。


「「「・・・・・・・・・」」」


 暫くして耳と目の状態が回復した冒険者達は目の前の光景を見て度肝を抜かれていた。


 訓練場の一角には大きなクレーターが出来ており、また、その少し奥にあった壁は見事に無くなっていた。


「鼎ちゃんが言ってた作戦って…これだったのね…」


「お姉ちゃん…これはちょっと…」


 鼎は全開モードである。


「さぁ、本番はこれからよ!」


 鼎は全開モード トップギアである。

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