第68話 夏希は考える。

 ニアとのデートと孤児院訪問を終えた夏希。


 今は宿屋屋に帰宅途中だ。


 ニアとのデートは楽しかったな。孤児院の子供達も可愛いかったしな。でも孤児院は大変そうだな。


 何が出来るか考えないとな。


 でも、領主がな…


 領主の名前聞いた?全てがニアピンなんだよ。惜しいよね。面白味に欠けるよね。「ツバート・トバル」だよ。これが「ツバーヲ・トバス」なら面白かったのに。「ト」と「ル」の2文字も変えなくちゃ行けないんだよ。「つばをとばーす」になるんだよ。「何処に飛ばすの?きちゃないよね!」って、いぢって遊べるんだよ。惜しいね!


 また変な事を考える夏希であった。


 宿屋に戻ってからお風呂に浸かってゆっくり考えるかな。(今日のご飯は何かな~)


 ああ、それとあの院長のチェンリさんとマリアナさん2人怖かったな…オーク2頭出したら「これだけあったらお腹いっぱいね!」って、笑いながら包丁振り回して解体してるんだよ。大人しそうな人達と思ってたのに…


 夏樹は色んな事を考えながら歩く。(そう言えば宿屋屋の屋号、気にしてなかったな)


 夏希は宿屋屋に着いた。そして何かを探している。そして夏希は見つけた。


[ ウサギの宿屋 ]


「普通だね。30点」


 そう言って中に入って行った夏希であった。


 入ってそのまま食堂に向かう夏希。食堂には若い女性の冒険者が4人居て、美味しそうにご飯を食べていた。(今日はビーフシチューっぽいな)


 カウンターに座ると奥さんが果実水を持って来てくれる。奥さんはサラさんが娘だから結構年齢は上の筈だが、その見た目は30代に見える。本当に若いのか聞くのは野暮だ。(可愛いは正義だ!)


「夏希さん、お帰りなさい。今日はブルバルブダルのシチューよ。お肉が柔らかくて美味しいわよ」


 ブルバルバルバル…なんだよそれ?知らねーよ、そんな魔物。(「濁音」と「ル」が多い名前だな!)


 見た目はビーフシチューだ。食べてみると美味しいビーフシチューだ。(もう牛でいいよな。シチューの名前ビーフシチューでいいよな)


 夏希は名前は覚えられなかったが、そのブルガルルルル何とかシチューが美味しいかったので、満足な顔をしてお風呂場に向かった。


「あ~~、気持ちいあなぁ」


 夏希は湯船に浸かりながら考える。


 孤児院がなぁ。建物は古いけど壊れた所はあるが何とか生活出来るレベルだ。子供達も少し細いが酷く痩せてたりする訳でも無い。服装も思ったよりはマトモだ。


 ギリギリの線を渡ってるんだろうな。何かあれば良い方にも悪い方にも傾いてしまう。


 予算が増えれば変わるんだろうな。予算があれば孤児院の建物は大きいから今以上に子供達を迎え入れる事が出来る。(スラムの子供達を助けることが出来る)


 かといって俺がその役所に乗り込んでもな~。所詮、余所者だしな~。


「あ~、イヤだイヤだ」


「何がイヤなのじゃ?」


 夏希が浸かる湯船から、黒い幼女が浮かんで来た。


「うぉ、スズランか!お前ここ風呂だぞ。俺を犯罪者にする気か!」


「ワレは気にせんのじゃ。それとも夏希は影で容姿が判らなくても幼女だったら欲情するのか?」


 黒い幼女は不適に笑っているようだ。


 夏希は湯船に浸かるスズランを凝視する。(うん、何となく雰囲気は判るがツルぺただからな)


「問題無いな。スズランは何で出て来たんだ?」


「…面白くないのじゃ。夏希が何か悩んでいる様だからな。ちと、話を聞いてやろうと思ったのじゃ」


 夏希はスズランに孤児院の事を話した。自分が何か出来ないか悩んでいる事を。


「ふん、夏希は優しいのじゃな。股の間のモノは凶悪な大蛇の様に怖そうなのに…」


「ぶはっ、お前は…もう影に戻れ」


「ふふ、出来る事はそう多くないのじゃ。だが、その1つでも手助け出来れば大きく変わって行く事もあるのじゃ。無理はせずに出来る事だけを確実に行う事じゃな」


 そう言ってスズランは影に戻った。


 スズランの言葉を聞いた夏希の表情は、柔らかな物になっていた。


「そうだな、出来る事を確実にやって行こう。無理をせずにだな」


「ああ、ビールがもう無いのじゃ。追加を影に入れとくのじゃ。ツマミもな!」


 スズランお前は…さっきまでいい話をしてくれてたのに台無しだな!


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