第60話 忍び寄る闇
他転移者達との話し合いを終えた夏希。
朝日が昇る少し前の時間。
「ダダダダダッ!バタン!とうっ!」
「ぐはっ!」
夏希は、デジャヴを夢の中で感じた。
「アスザック!お前は何でこんなことする。俺は寝坊してないだろ!」
夏希はベッドから起きて、腹にダイブしたク○ガキの頭を鷲掴みして怒鳴った。
「いや~、昨日のダイブが面白かったから、早起きしてやって来た。はははは」
夏希はもう片方の手も添えて力を込めた。
「あだだだだだ、兄ちゃんギブだ!」
「次は、コ○ス」
「こえぇな…ご飯はまだだ。あばよ!」
アスザックはそう言って部屋を出て行った。
はぁ、もう目が覚めたわ。
夏希はベッド脇に置いてある水差しからコップに水注いで一息に飲んだ。
今日も冒険者ギルドだな。討伐数増やしたいから早く行くか。ああ、ニアに渡すお菓子の準備もしておくか。
夏希はアイテムボックスからチョコを出し、ニアから預かった袋に入れた。
ちょっとどうしても試してみたい事がある…
夏希はネットからあるものを購入した。それは猫まっしぐらのチュ○ルだ。(あれ?猫まっしぐらは違う商品だっけ?まぁいいや)
これ、人間も食べれる物だし大丈夫だよな?猫属のニアが食べたらどう反応するかめっちゃ興味があるんだよな。袋に入れとこ。
夏希は服を着替えて食堂に降り朝食を食べた。
ここの朝食は量は少ないが味はいい。(女性が多い宿屋だからな)
ギルドに着いたのは、朝日がほんの少し顔を出したばかりの時間だ。まだ、冒険者も少ない。今日もゴブリン討伐でいいたろう。ニアは…居た。
「ニア、おはよう。今日もゴブリン討伐にしとくわ。あと、これ専属手数料な。チョコと違うものも入れてるから食べてみて感想を頼む」
「夏希さんにゃ、おはようございますにゃ。今日にゃ、早いですにゃ。本当にゃ、持ってにゃくれたんですにゃ!」
「お前…やけくそな言い方だな。ワザとか?」
「にゃ、の数だけチョコが増えると思って…増えないにゃ?」
「ワザとらしい場合は数を減すからな」
落ち込むニアを背に、夏希はゴブリン討伐に出掛けた。
昨日と同じ森に入った。時間はまだ早い。討伐数に期待を持ち夏希はゴブリンを探す。
ここら辺りはゴブリン以外は見かけない。今日も水刃でサクサクと討伐して行くつもりだ。
昼までにゴブリン12匹の討伐をした。少し多い気もするが、まぁ俺としては問題ない。
「そろそろ昼飯にするか」
夏希は見通しの良い場所にあった大きな岩の上に登り、昼飯の準備をした。昼飯は宿屋で準備して貰った弁当だ。
宿屋の奥さん(サラさんのお母さんだな)は料理がとても上手だ。今日の弁当は具だくさんのサンドイッチだ。甘辛に揚げた鶏肉と野菜を挟んだ物が特に旨い。
食後はネットで買ったコーヒーを飲みながらのんびりする。(この世界、コーヒー無いんだよな)
ふと、威圧感のある気配が近付くのに気付いた。
まだ距離はある…
夏希は急いでコーヒーを飲み干して岩の陰に隠れる様に身を伏せた。(一体何が来る?)岩の陰から威圧感のする方向を凝視する。もう見えてくる頃だ。
「来た!」
夏希はどう表現していいのか判らないものを見て思考が少し停止した。
それは一言で言うと「黒い大きな闇」であった。
夏希の思考が動き出す。(これは対処不可能だ)夏希は岩陰から「闇」と反対方向に逃げるよう静かに下がって行く。「闇」に表情は無いが何かを探しているように感じる。
夏希は額から汗が滴り落ちる程、緊張していた。見付かれば確実に殺される。そう思わされる程の威圧感が夏希を襲うのであった。
「見付けた」
その「黒い大きな闇」は、目は無いが、確かに俺を見て、そして口も無いが、再び耳に響く声を発した。
「逃がさない」
夏希は瞬時に数え切れない程の拳大の水刃を作り上げ、その「闇」に向かって放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます