第65話 協力者は誰だ? 【ざまぁ】

 僕たちの元に、ロントモアーズの騎士団がやってきた。

 その数100名ほど。

 団長は、閃光のエマこと、エマ・コンヴァーユである。


「アリアス! 大丈夫か!?」


「ああ、来てくれたのか」


「近くを巡回していたんだが、衛兵からの魔報鳩で状況を知った。遅くなってすまない!」


「ああ、気にしないでくれ。もう粗方済んだから」


「す、済んだ!? 魔報鳩の手紙には2千人の魔法使いがいると書かれていたのだが!?」


「ああ、全員やっつけた」


「やっつけた!? も、もしかして……。さっき、大空に大量の火球が出現したが、アレは君の魔法か? アレで全員を倒したのか?」


 僕が頷くと、エマは眉を上げた。


「君は本当に凄い奴だな! S級の魔法使いだって敵わないぞ!」


「こいつには腹が立ったからな。やむなく使ったまでさ」


 では、エマに手伝ってもらおうか。


「全員、息があるはずだ。動けないだろうから捕まえてくれると助かる」


「よし! わかった!! 全員、直ちに引っ捕えよ!!」


 エマの号令で負傷した魔法使いたちは次々と縄で縛られた。


 彼女はゼルガを縛りつけた。 


「アリアス。こいつが首謀者か?」


「そうだとは思うが、他にもいるはずなんだ。連れて行くのは待ってくれ」


 さて、協力者は誰だ?


「ゼルガ。この襲撃はお前だけの力じゃないだろう?」


「うう……。そ、そんなこと言えるか!」


 ま、そうだろうな。

 教えろと言って、素直に教えてくれるわけもないか。


「ダマンデウス。ゼルガの身の上で数字的に変わった所はないか?」


『うむ。こいつの貯金額が1千万コズンも増えているな』

 

 ほぉ。


「ど、ど、どうしてそれを!?」


 説明なんかする義理はないが、尋問の効果はあるか。


「この杖はどんな情報も数値化できるんだよ」


「ひぃいい!! 俺を見るなぁあああ!! 俺は何も知らないんだぁあああ!!」


 無視だな。


「ダマンデウス。金が増えたのは、いつだ?」


『一昨日だな』


 なるほど。

 2日前にそんな大金が手に入ったのか……。


 しかも、2千人も魔法使いを雇った。

 つまり、援助額は相当な金額になるのか。


「大金を使えるのなら……。貴族か……王室の誰かだな?」


 ゼルガは青ざめた。


「し、し、知らん知らん! 俺は何も知らん!!」


「貴族……」


「……うう、知らん!」


「王室……」


「ギクゥ!! し、知らんッ!!」


「なるほど、王室の者か」


「た、頼む! それ以上はやめてくれ!! 俺は本当に何も知らないんだぁあああ!!」


 そうはいかん。

 国王の命が狙われたんだぞ。


 ゼルガだけで終わる問題ではない。


「王室の人間で、僕に恨みがあるのは限られているんだ。ロントモアーズ環境大臣のジャメル卿。ジルベスタルの相談役、オババ。それと──」


 彼は体調不良を原因に乗車していなかったな……。




「環境大臣のギャンベリック卿だ」




 ゼルガはガチガチと震えた。


「し、し、知らん! お、俺はなんの関係もないぞ!!」


 この反応……。

 それに乗車をしなかったのは襲撃を知っていたからだ。


「ギャンベリック卿がお前の手助けをしたんだな」


「ひぃいいいいいいいいッ!!」


 と、叫ぶのと同時。

 空は曇り、ゴロゴロと雷鳴が鳴り響いた。


 なんだ、この天気。魔法か?


 しかし、こいつらのダメージは僕のファイヤーボールで相当なんだ。

 もう、魔法攻撃なんてできないはずだが?


 エマはゼルガを問いただした。


「ギャンベリック卿は魔法使いのギルド長をしているそうじゃないか! ここに集めた者たちもギャンベリック卿の関係者か!?」


「ひぃいいい!! し、知らない!! 俺はなんて知らないぃぃいいいいいいッ!!」


 この怯え方……。


 何かがおかしい。


 それに、この空……。


 ……そうか!




「エマ! 離れろ!!」




 僕は彼女を抱いて、ゼルガから離れた。



 瞬間。





バリバリバリーーーーーーーーッ!!





 凄まじい落雷がゼルガを襲う。





「ぎゃあああああああああああッ!!」



 


 彼は黒焦げになった。

 

 その全身は煤となりボロボロと崩れる。


 エマは眉を寄せた。


「な、なぜ……? 一体、何が起こったんだ?」


 おそらく……。


「魔法の契約書だ。彼はギャンベリック卿と契約を交わしたんだろう」


「……じゃあ、あの雷は神の裁雷さいらいか。ゼルガはどんな契約違反をしたんだろうな?」


「おそらく名前だろう。ギャンベリック卿の名前を僕たちの前で呼んでしまったから裁雷を喰らったんだ」


「自業自得ね……」


 これで諸悪の権化は判明したからな。

 帰国したらただじゃおかないぞ。


 さて、それじゃあみんなの安否確認をしようか。


 僕は機関車に戻った。




「アリアスさん!!」




 ガバッと抱きついて来たのはオッツ婦人である。


 大きな胸の間に僕の顔は埋もれた。


「ふ、婦人……。こ、国王は?」


「国王には傷一つありません。それに、みんな無事です」


「そ、そうですか……。良かった」


「あなたは? あなたは怪我はありませんか?」


「ええ。僕も大丈夫です」


「ああ、良かったぁああ……」


 むぎゅぅうう……。


「おかぁ……」


 おっと……。


 大事故になるところだった。


 昔、学校の子供が、先生のことを母親と間違える事件があったっけ。


 こんなことでは、婦人に子供扱いされてしまうよな。


「婦人は大丈夫でしたか?」


「ええ。あなたのおかげで助かりました」


「そうですか……」


 と言って、そっと彼女を抱きしめた。




 無事でなによりです。お母さん。




──────


面白ければ星の評価をお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る