第64話 究極のファイヤーボール 【ざまぁ】
高笑いをする男。この声、どこかで聞き覚えがある。
そいつは覆面を取った。
「ふはは! これで誰だかわかっただろう」
ゼルガ……。
鉄道ギルドのギルド長を決める時に揉めた奴だな。
そうなると、
「これは復讐か?」
「ふはは! そう言うことだ! 俺をギルド長にしないからこんなことになるんだよ。ヒャハッ! レージャと一緒に後悔するがいいさ!」
顔を晒したということは……。
「僕を殺すつもりだな」
「ヒャハハ! 土下座するなら許してやってもいいがなぁ!」
やれやれ。
許す気なんて微塵もないくせによく言うよ。
「わ、私の命で済むのなら!! 私を殺してください!!」
大声を張り上げたのはレージャだった。
「アリアスさん。ごめんなさい……。わ、私のせいです……」
「レージャ。君は悪くなんかない」
「わ、私……。ね、根暗だし……。その……。み、見た目も気持ち悪いから……」
「それは君の個性だ。それを受け入れられない奴がバカなだけさ」
それに、僕とレージャの命だけではどうにもならないはずだ。
王室にこれだけのことをしたんだ、ゼルガは打首どころじゃ済まないぞ。
彼に関係する親族だって死罪になってしまうだろう。
つまり、この人気のない場所で、
「奴は、口封じの為に全員を殺すつもりなんだ」
「え!? そ、そんなぁあ」
「君や僕が死んだところでどうにもならないさ」
「ヒャッハ! それはわからんぞアリアス所長。その根暗女と一緒に土下座をすれば許してやらんこともない!」
レージャは体を震わせた。
「も、もしも、本当に……。土下座で許してくれるのなら……」
そう言って、膝を地面に落とした。
レージャ……。
「早まるな。奴に譲ることなど1ヨクトもあってはならん」
「で、でもぉ……。み、みんな……。こ、殺されてしまうかもしれないんです……うう」
彼女はボロボロと泣いた。
ああ……。その涙さえ、奴には惜しい。
「あんな愚かな人間に、僕たちの心が搾取されることはないんだ。謝罪の気持ちも、懇願の言葉さえも、1ヨクトさえあってはならない。奴に与えられるのは──」
僕の声は高らかに響く。
「 制 裁 だ け だ 」
僕は邪神の魔計器を地面に突き刺した。
「ヒャッハハハーー!! バカかアリアスゥゥウ!? この人数で制裁なんて下せるもんかぁああああ!! 俺がお前たちに制裁を下してやるぅううう!! 全員皆殺しだぁあああ!!」
ゼルガの号令で2千人の集団が一斉に魔法を放った。
それは炎、雷、氷、風、と様々な魔法攻撃。
僕は、その全ての攻撃を巨大な魔法壁で防いだ。
ドドドドドドドドドーーーーン!!
「ヒャッハッハッハッーー!! 防ぐだけが制裁かぁああ!? 無能がぁあああ!! あんな巨大な魔法壁を使って、魔力量が持つもんかぁあああ!! 撃て撃てぇえええええ!! 制裁だぁあああ!! 正義は勝つんだよぉおおお!! ギャハハハーー!!」
ボーバンとカルナは攻撃体勢を取った。
「貴様のような悪には、このボーバン・ノーキンが制裁を喰らわしてやる!!」
「私だって許さないんだから!!」
いや、仲間の手を借りることさえも罪深い。
「2人は下がっていてくれ。ここは僕一人でやる。君たちの攻撃さえも奴に与えるのは惜しい」
「「 え? 」」
「な、何言ってんのよアリアス! 相手は2千人はいるわよ!?」
「そうだぞい! お前は魔法壁を出すだけで魔力量が精一杯だろうに! 俺たちが攻撃をするぞ!」
「安心してくれ。体内魔力は魔法を発動させる起爆剤にすぎない」
僕が両手を広げると、空中には無数の火の玉が浮かんでいた。
「な、何!? あれ!? す、凄い量……」
「え、S級魔法の
いや、
「ファイヤーボールさ」
「「ファイヤーボールゥウウウ!?」」
最小限の魔力量でファイヤーボールを生み出す。
その魔力量は1つ0.03。
かつ、まだ増やす!
「ダマンデウス! 自然魔力量を限界まで測るんだ!」
『ふん! 我は最強の邪具なり!! お易い御用さぁあ!!』
僕の周囲を数字の羅列が包み込んだ。
「はわわわわわッ! ちょっとアリアスどうなってんの!? あのファイヤーボール。ま、まだ増え続けているわよぉおおお!?」
こんなもんで終わらない。
加えて、威力を増加させる!
全ての数値を瞬時に取り込んで設計する。
人の汗、呼吸の量も! 空気中の微生物。塵の数だって!
「ダマンデウス。君の出せる数値はこんなもんか? 僕の計算が追いついたぞ」
『やってる!! やってるよぉおお!! 原子の数までいくつもりかぁああああ!?』
全て、計算して、威力を高める!
僕を怒らせるとどうなるか……。
身を持って教えてやるよゼルガ。
僕が右手を掲げると、静寂が辺りを支配した。
その場にいる全ての者が大空を見上げる。
ゼルガは絶望とともに呟いた。
「な、なんだ……。あれは……!?」
さぁ、
制裁の始まりだ。
「ファイヤーボール
ドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーンッ!!
「マ、マジックディフェンスだぁああ!! 魔法壁を張れぇええ!!」
残念。それも計算づくだ。
ゼルガの叫びは虚しく、炎の衝突によってかき消された。
各自が張った魔法壁を貫いて、
ドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーンッ!!
「「「 ギャアアアアアアアアアアアアッ!! 」」」
跡に残ったは、小さなクレーターの数々と大火傷を負った者たち。
「う……。うう……」
ゼルガは辛うじて息があった。
『こんな奴、殺してしまえば良かったではないか。お前ならもっと威力を上げれたはずだ』
「そうはいかないさ。こいつには教えてもらいたいことがあるんだからな」
『何を知りたいのだ?』
「首謀者を聞き出すのさ」
ゼルガに、こんな大勢を動かせる人脈はないはずだ。それに資金。
手を貸した人物は誰だ?
──────
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