第80話 銀髪がピンチ!
ねこは部屋の隅でうずくまるように座っている。
最初はモウツαの件で肩ちゃんとやり取りをする中、無視されたのが原因で落ち込んでいるのかと思ったが、銀髪の一言から状況は変わりつつある。
「銀髪。分かるのか?」
「うん……ねこは……」
「ねこちゃん大丈夫かな……」
「肩のせいなのかな?」
「どうなんだ? 銀髪」
「ねこの思考からは何も見えてこない……寝ているみたい」
「え?」
寝ているだと……人騒がせな奴だなぁ……朝から部屋を飛び出してずっと外でウロチョロしてたようだし恐らく疲れていたのかもしれないな。
まぁ、何も無くて良かったけれど寝るならベッドにいってくれ……。
「良かったー! ねこちゃん落ち込んでいたわけじゃないのね」
「肩のせいじゃない……肩のせいじゃない……肩のせいじゃない……」
「怖いよ肩ちゃん……」
それにしても銀髪の着ているタイツの能力も捨てたものじゃないな。あのタイツ結構色々出来るみたいだけど、どういった仕組みになっているんだろうか……もっとも説明されたところで理解出来るとは思えないけどな。
ばたっ!
「!?」
「キャー! 銀髪ちゃん!」
「銀髪っ!」
「えっ! えっ……肩なにもしてないよ?」
突然、俺たち三人の前で銀髪が床に倒れた。いったいどうしたというんだ……っとそんな悠長に考えている場合じゃないな。
「銀髪っ! おいっ! 大丈夫かっ!」
俺は銀髪に駆け寄り声をかける。反応はない……何が起きているんだ。
「集塵くん、ちょっといいっ?」
「え? あ、うん」
俺は銀髪から、ほんの少し離れると五十嵐さんは銀髪に近づき額に手を当てた。
「すごい熱……集塵くん、銀髪ちゃん病院につれていった方がいいかも」
病院って……そんなに酷い状態なのか? 俺は五十嵐さんの横に並び銀髪の額に手を当てる。
「熱っ! これ熱いなんてもんじゃないぞっ!」
「ね。だから病院に」
「そ、そうだな……これは普通じゃない」
ていうか五十嵐さん冷静すぎるだろ……。
「集塵さん! 今スマホで調べてみたけど、大きな病院はこの街にはないよ! タクシー呼ぶ?」
すぐに調べてくれたのか……たしかに、この辺には大きな総合病院は存在しない。たしか何駅か先までいかないと駄目だ。他に病院はないのか……普段病院なんて行かないから、こういう時にすぐに思いつかない……最悪、救急車を呼ぶか……。
「肩ちゃん。悪いんだけど大きな病院じゃなくてもいいから他には無いか調べられるかな?」
「もう調べた! うさぎのらびっとの先にあるみたい!」
「あの先に病院なんてあったのね」
「よし! 今すぐそこに連れていこう。まだ時間は間に合うはずだ」
「19時までだって!」
「余裕だな……急ごう」
寝ているねこが目を覚ました時に誰もいないのは不安だろうから、五十嵐さんには留守番をしてもらうことにした。
俺は銀髪をお姫様だっこのように抱え上げ、肩ちゃんと一緒に玄関へと向かう。
バタンっ! というドアの閉まる音を背に俺たち二人は走り出すとマンションの入り口にコミアの姿が目に入った。
「おや? 小娘二人も連れてお出かけかい?」
「コミアさん。いや、それが銀髪が突然倒れてしまって、すごい熱なんです! これからうさぎのらびっとの先にある病院へ連れていこうかと」
「それは大変ねー。でも、あの病院はやめた方がいいわよ。ハッキリいってヤブだからねぇ……」
「でも、すぐに連れて行ける病院はそこしかないんです」
「どれどれ、ちょっと見せてごらん」
コミアは俺たちがやったように銀髪の額に手を当てる。その他にも銀髪の身体の隅々まで見始めた。まるで何かを探しているようだ。
「あの……コミアさん。申し訳ないんだけど俺たち急いでいるんだ」
「慌てん坊さんだねぇ……急がば何とやらだよ……ふーん。なるほどねぇ……この症状なら何とかなりそうだよ坊や」
「え? 本当かコミアさん」
「ああ……このマンションにあたくしの弟が住んでいる。今から頼んでやるからついておいで」
――コミアさんに弟? しかもこのマンションに住んでいるなんて……それにしても、その人は何者なんだろう……ま、まぁ、きっとお医者さんか何かなんだろう……だよな?
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