これは日記なんだろうか【KAC2022第11回・日記】

はるにひかる

 


 目を開けると、知らない天井が視界に入った。


 ここは何処だ。

 俺は何故か、ベッドに寝ている。

 上半身を起こして、室内を見渡す。

 どうやら、ここに居るのは俺だけの様だ。

 ベッドの脇の台の上に【DIARY】と書いた本が置いてある。

 誰かの日記だろうか。何で、こんな所に。

 いや、そもそも俺は何でこんな所に。

 申し訳無いとは思ったが、手掛かりが有るかも知れないと、手に取って開いてみた。

 ……何だ、これは。

 日付は1日1日続いているが、書いて有る内容は全部同じだ。

 しかも、どれもミミズが這った様な文字で。

 これは日記なんだろうか。

 頭が痛くなったので、日記を元の場所に置いて、ベッドに寝転がった。


孝弘たかひろっ。 元気?」

 1人の女性が部屋に入って来た。誰だ。

 それに、孝弘って誰だ。

「――あ、そっか。ベッドに寝っ転がっている、貴方は孝弘」

「俺が?」

「うん、そう。それで、今日は2022年3月28日ね」

 2022年3月28日。日記の最後の日付が2022年3月27日だったので、その翌日と云う事になる。

「う……」

 何故だか、また頭が痛み、頭を抱える。

 今日が、2022年3月27日?

 俺の名前は、孝弘?

「ううああ……」

「ちょっと孝弘、大丈夫?! ああ、えっと……」

 慌てた女性は、枕元に置いてあるボタンを押した。

 ――と、直ぐに2人が部屋に入って来た。誰だ。

「孝弘が、苦しそうに頭を押さえて!」

「ああ、辛そうですね。鎮静剤をっておきましょう」

 そう言った白衣の男が、暴れる俺を押さえ付けて腕に注射をした。

 直ぐに頭がボーっとして来た。

「……孝弘、今日は私、帰るね。また明日来るよ」

 ベッドに大人しくなった俺にそう言うと、馴れ馴れしかった女性は後で部屋に来た男女と話しながら部屋を出て行く。

「……生、やっぱり私、……来ない方が……」

「いや、……頭痛は……良い傾向……」

 ボンヤリする頭に、そんな言葉が入って来る。

 再び静かになった部屋の中で、俺は何故だか台の上の日記に書かなくてはいけない気がした。でも、誰のか分からない日記に、そんな事をして良いのだろうか……。


 頭が上手く働かない中、日記を取って、続きのページに日にちを書き込む。

 そして――。


『めが さめると、しらない へやに いた。しらない おんなが きた。

 おんなは おれを、タカヒロと よんだ。あたまが いたくなった。

 ひづけを きいたあと、また あたまが いたくなって あばれた。

 はくいの おとこが ちゅうしゃを して、おれは ぼーっとした』


 どこかで みた にっき。

 ミミズが はった ような もじで。


 ……ああ、そうか、これは、おれの、にっき――。



――――――――――――――――――――――――――――



 目を開けると、知らない天井が視界に入った。

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