Life Diary

はちこ

第1話

 みなさん、こんにちは。私は天国で天使として働いている、アマノ、と申します。今日はみなさんにどうしてもお伝えしたいことがあり、こうして筆をとっております。

 さて、みなさんは「天国」にどういったイメージをお持ちでしょうか?いきなりどんなイメージをお持ちか、と聞かれてもすぐには答えられませんよね。すいません。おそらく、死んだ人間の魂が来る場所、といった認識がされているのではないでしょうか?まぁ、おおむね合っています。ただ、それ以降のことはあまり知られてはいませんよね?あぁ、確かにみなさんはまだ生きていらっしゃるので、死んだ後のことなんて知るわけがない、ですよね。これまた、失礼しました。

 では、天国はどういったところで、私たち天使がどういった仕事をしているのかをご紹介したいと思います。


 天国とは、みなさんご存知の通り、死んだ人間の魂がやってくる場所です。ただ、人間界で一般的に広まっている、美しい自然が広がり、花々が咲き乱れ、魂が再び人間の姿に戻り幸せそうに暮らしている場所だけではありません。もちろん、そういったエリアもございますが、【速やかに魂を次の人生へ送り出す。】という最も重要な目的のため、他にも様々なエリアが用意されています。まず、死んだ人間の魂が最初にやってくるのが、シアタールームです。シアタールームとは、魂が生前の思い出を映像で振り返る部屋です。人間は若くして亡くなっても、高齢で亡くなったとしても、生きていた頃への未練はなかなか断てないものです。未練が断てないと、次の人生に向けての準備が思うように進みませんので、このシアタールームでの時間がとても重要です。シアタールームにて、自分の人生がどれほど幸せだったか、ということをしっかりと鑑賞していただくのです。自分が幸せだったということを実感できると、魂はスムーズに次のエリアに進めます。

 では、その映像はだれがどうやって作っているのか?そう、ここで私、アマノの登場です。実は私、ここ天国にて、みなさまにお届けする幸せの映像制作を行っています。私はこのシアタールームの担当になって、約3年。一通り、映像制作について学び、今はチーフとして他の天使に技術を伝えたりもしています。あぁ、みなさん、その映像のもとになる人々の思い出はどうしているのか、気になっていますね?みなさんには特別にお教えします。ここ天国では、地上で生きている人間一人につき一冊、Life Diary(人生日記)を用意し、みなさまの日々の幸せを記録しております。私たちはこのLife Diaryを基にして、おひとり、おひとりにオリジナルの映像を制作しているのです。

 最初に申し上げていた、私がどうしてもお伝えしたかったこと、それはつまり「安心して天国に来て欲しい。」ということです。おいおい、なんてことを言うんだ、というお怒りもごもっともです。ですが、人間の死はある日突然訪れることもあります。長く患い死について意識していたとしても、やはりその時が来れば人は不安にもなるでしょう。しかし、私たち天使がお届けする映像は、必ずみなさんに満足いただけるクオリティになっています。つまり、言いにくいのですが、みなさんがいつ天国に召されたとしても後悔しないよう、私たち天使が心を込めて、みなさまの幸せを映像化しております。言い換えますと『安心して、毎日を精一杯生きて欲しい。』ということです。

 Life Diaryでみなさんの幸せは余すところなく、記録させていただいておりますし、私たち天使は日々、映像制作に一生懸命取り組んでおります。みなさんが天国にいらっしゃった際には、あなただけの幸せなオリジナル映像をお届けし、心残りなく次の人生へと導きますので、ご安心ください。


 今日は最後まで私の話を読んで下さり、ありがとうございました。機会がありましたら、シアタールームの次のエリアについてもご紹介出来ればと思っております。それでは、いつの日かあなたをシアタールームにご案内する日まで、お元気でお過ごし下さい…


天使 アマノより

 

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