神様日記

磯風

神様のある日の試み

ずっとずっと、日記を書いているのだけれど一体いつまで書けばいいのか解らなくなってきたんだ。

だから……ちょっと書くのを止めてみたんだ。


そしたら、今までと少し違う事が起きてね。

だけど、我慢して書かないでいたら……なかなか面白い事が始まったんだよ。

僕の書く日記は『明日起こる事』の日記なんだ。

書かなかったら、何も起こらないと思っていたんだけど、どうしてああいう事になったんだろう。


猫が一匹、多くの命達と同じように生を終えて僕の所に来るはずだった。

彼がこっちに来る予定の日の日記を書かなかったら、なんと生者に関わってしまった。


びっくりしたよ。

なんの怨念も悲しみも持たなかった魂が、違う種族の、しかも無垢な生き物に関わってしまうなんて。

普通は有り得ないんだよ?

魂魄と肉体を持つものは全く異質な世界に存在しているから、触れ合えないはずなんだ。

強い怨みでもない限り。


でもそのせいで三人の生者の運命が、どうやら違ってしまったらしいんだよ。

おかげでそっちの担当者に、滅茶苦茶怒られてしまってね。

僕の担当は猫だけだから、他の生き物の事まで知らないよ。

でも僕が日記をさぼったせいだと、あちこちから非難囂々さ。


その三人の本当の運命に関わるはずだった人達に、あふたーふぉろー?……ってのをしなくちゃならないって言われたんだ。

だから、その不思議に生者と関われる猫の魂に……手伝ってもらう事にしたんだよ。

僕はその世界に日記以外では関われないし、日記に書けるのは猫たちの事だけだからね。



その猫は、とっても面白い子でね。

可愛いだけじゃなくて、もの凄くいろいろな事が出来るようになっていったんだよ。

魂が生者に関わるとこんなにも成長に限界がないなんて、大発見だったね。


同じような猫が増えたら、もう少しあの猫の手伝いが出来るかと思って、日記に『魂魄となって生者と関わる』って書いてみたんだ。

でも、あの猫のようにはならなくて、ただその場に留まるだけになっちゃうんだよ。

勿論、その猫達は直ぐにこっちに呼んであげたけどね。


だけど、もう日記を書かない、なんて事したら次は何を言われるか解ったもんじゃない。

だから、試す事は出来ないんだ。

あの子にはひとりで頑張ってもらうしか無さそうなんだよね……ごめんね。


ああ、今日も生者と関わっているね。

この生者は……ちょっと厄介だなぁ。

あの子、怒ってるよ。

でもダメだよ、その生者はまだ役割があるから……あっ!


あーあ……また、運命が変わってしまった……

うっ、あちこちから文句が聞こえてきたよ。

だから、しょうがないだろう?

僕の日記で『明日』を指定出来るのは、生きている猫たちだけなんだから。


僕が出来る事と言えばせいぜいあふたーふぉろーの人達への連絡と、あの子の移動の手伝いくらいなんだよ。




『猫の手屋』から広告が来たら、是非、あの子に依頼しておくれ。

あなたの、本当の運命に、あの子が手を貸してくれるから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様日記 磯風 @nekonana51

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ