人生は冒険だ

第1話

「生きる理由を見つける、なんてとてつもなく難しいもんだよ」

　僕の問いかけに爺さんはそう言う。

「生きる。それ自体は強制されたもんだしね。僕ら自身が生まれ落ちたいと願って生まれてきたわけじゃないし。そんな強制されているものに意味を見出すのは難しい」

　爺さんはそう言って煙管を取り出した。

「だからどれだけ自分で選んで、どれだけ自分で納得するか。それが大事なんだと思う」

　そう言って長押に飾られた数々の賞状を見回した。

「そうやって納得を繰り返していく内に社会の中での自分の役割が見つかるんじゃないかな。それが使命になって、ようやく生きる意味が生まれると思うんだ」

「ようやくって、それじゃあ生きる意味が見つからないまま死ぬこともあるんじゃ」

「……あるだろうね」

　紫煙を吐き出してそう言った。

「生きる意味を探すことが目標になって生きる。それもまた面白い。よくある冒険譚ではあるんだかないんだか分からないお宝を目指すだろう？　それと一緒さ。あるんだかないんだか分からないからこそワクワクするし、面白い。それが人生は冒険だという理由さ」

「そっか……じゃあ最後にもう一つ質問」

「なんだ？」

「爺さんはもう冒険を終えたの？」

　その問いかけに、

「まだ途中さ。死ぬまで冒険していた方がカッコいいだろう？」

　爺さんはそう言って笑う。その顔が凄くカッコよく、なんだか憧れてしまう。こう笑える爺になろう。そう心に誓うのだった。