閑話 おままごと

「ヨータはいぬ! わたしはママね!!」


「いやだよぉ…… ぼく犬よりパパがいい」


「ダメ!!」


「カナちゃんなんでいじわる言うの?」


 イロハニ幼稚園。

 2人の園児が園庭の隅っこでおままごとをしていた。

 可愛いピンクの服を来ている勝気な女の子は、プラスチックでできたフライパン型の玩具を持ち。

 青いTシャツに短パンの弱気な男の子は女の子から渡された骨の玩具を持って困惑していた。


「ぼくも一緒におりょうり作りたい!」


「だーめ!!」


「だからどうしてって……」


 2人はおままごとの配役で揉めていた。

 いっつも女の子は男の子にパパ役をくれないのだ。


 いつも男の子は犬か、猫か、近所のおじさんか、娘に息子ばかり。


「ぼくもパパやりたい!!」


 必死の主張は、受け入れられない。


 なぜなら……


 勝気な少女が胸を張る。

 この頃は奥手じゃなかったから。


「ダーメ!! わたしたちパパとママの役なら、おとなになってからずっとできるじゃん!『いまをたのしまなきゃ』だよ!!」


 彼女にも、確固たる意思があるから。


「……そうだね!」


 それは2人の中では、決定事項だったから。


「大きくなったらぜーったい結婚しようね、ヨータ!」


「とーぜん!」


 ――――小さな誓いは25年の時を経て

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