第6話
「鑑識と絵が描ける奴を呼んでくれ」
五十嵐が岡崎に電話でそう指示した。
数分後、岡崎、榊原と数人の警察官が駆け付けた。蓮宮は椅子に座り、自分を抱きしめて恐怖から逃れようとしていた。それでも、身体の震えは止まらなかった。
そこへ、似顔絵描きの女性警察官がそっと寄り添った。
「もう大丈夫ですよ。安心してください」
微笑みかけてみたが、蓮宮は恐怖から逃れられず、その表情は硬直していた。まともに話が聞けそうにないと、しばらくそっとしておくことにした。
警察官が駆け付けた後、五十嵐は部屋から出て、しばらくして戻って来た。その手には水のペットボトルとチョコレートを持っていた。
「甘いものは好きか?」
五十嵐が蓮宮に近付いて、水とチョコレートを差し出した。
「あなた、甘いものが似合わないわね」
蓮宮がふっと笑った。離れて見ていた似顔絵描きの女性警察官は、この機を逃さずに話しかけた。
「落ち着かれましたか? 私は
「はい」
蓮宮は短い返事をした。
蓮宮は見たモノについて語った。
「私が窓を見た時、赤い目がこちらの様子を窺っていました。そして、その目が私を見たので視線が合ってしまいました。私も驚きましたが、相手も驚いたようで、すぐに姿を消してしまいました。髪の色は白か銀色で、外の風で髪がさらさらと
梶野の質問に答えながら、その特徴などを説明すると、だんだん絵が出来上がっていった。
「描けました。確認していただけますか?」
梶野に言われ、蓮宮は頷いた。
梶野の描いた絵を見た蓮宮は、再び恐怖が蘇り、椅子から落ちそうなほど怯えた。
「大丈夫か?」
五十嵐が蓮宮の身体をがっしりと掴んだ。その力強さと温かさに安心したように座り直した。
「どうだ? 似ているか?」
「ええ。この顔よ」
色鉛筆で丁寧に繊細に描かれていたのは、無表情の銀髪で赤い瞳の少女だった。
鑑識は、窓に残されている手形からの指紋採取に苦労していた。窓は嵌め込みで、内側から指紋は採れない。消防士に協力を要請し、屋上からロープで宙刷りになりながら、命がけで臨んだ。
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