第3話

 住民たちは、五十嵐たちがいる座敷牢の前で車座になって座った。全員で八人だった。

「どうしようか? 警察官を掴まえちまった。罪になるのかな?」

 白髪短髪の老人が言った。

「棒で殴ったから暴行罪だよ。こうして掴まえたのは監禁罪だろうな」

 この中では比較的若そうな男が冷静に言った。会話は、すべて五十嵐たちにも聞こえている。

「これからどうなるんだろう? 九条さんがあれを連れて帰って来た」

「おい、聞こえるぞ。もっと、小さい声で話せ」

 住民たちは、五十嵐たちに聞かれまいと声を潜めたが、同じ部屋の中では、まったく無意味だった。彼らの会話を聞いていると、分かったことがあった。



 九条家は、もともと、この田舎町の住民ではなかった。九条誠二の父が歴史学者で、この町のヴァンパイア伝説を調べていたという。それはまだ誠二が幼い頃だった。この町の文献や資料は、隣の市にある、市立図書館に貯蔵されていた。伝説の通り、不可解な事件が続き、犯人と思われる人物を村人たちの手で処刑したという内容だった。それがあまりにも、衝撃的な出来事だったため、鬼、吸血鬼、などと言う尾ひれがついていた。

 しかし、話しはそれでは終わらなかった。


「九条さんは大丈夫ですかね? ご両親のようにならないかね?」

 心配そうに白髪長髪で、髪を後ろで束ねた老婆が言った。

「誠二さんは頭のいいひとだよ。大丈夫だろう」

 九条の両親の不可解な死は、今回の事件、そして、五十嵐たちを監禁している事にも繋がっているようだ。


「大変だ! 九条さんが倒れている。みんな来てくれ!」

 一人の男が慌てたように駆け込んできた。

「何だって? 九条さんはどこだ!」

 住民たちは急いで、九条の元へ向かった。


「どうやら、チャンス到来のようだな。危険な目に遭うのを覚悟でついて来るのか、このまま帰るのかどうする?」

 五十嵐が蓮宮に問いかけた。

「五十嵐さん! 危険ですよ。僕らで守りきれませんよ」

 須藤が言うと、

「あら、ボディーガードがそんなことを言うの?」

 蓮宮は悪戯っぽく、須藤の顔を覗き込んだ。

「でも、私のせいであなた達が死んでしまったら困るわ。戦うことは出来なくても、ちゃんとあなたたちの指示に従うわ。ジャーナリストが危険な目に遭うのは、真実に近づいている証拠なのよ」

 蓮宮は帰る気はないようだった。

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